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「こども誰でも通園制度」理想実現までの高い壁 利用枠「月10時間以上」だが現場は保育士不足

東洋経済オンライン / 2024年1月23日 7時0分

しかし、こういった効果が得られるためには、同じ施設で継続的に保育が行われ、保育者、子ども、保護者の間に信頼関係が構築される必要がある。

もちろん、一時預かり事業をつないで延長できるようにすることもできる。しかし、そうやって時間を延ばせばよいというものでもない。この事業を大きくするのなら、それに見合った実施体制を整えなくてはならない。

待機児童数は減少しているものの、保育の必要性を認められる子どもの保育の枠が不足している地域はまだまだ多いのも事実だ。

質が低い保育では意味がない

受け入れ側の保育現場からは、先が読めない役割拡大の要請に不安の声が上がっている。

保育の場に慣れない子どもが入れ替わり立ち替わりする場合、保育者は子どもの心や安全への配慮をより細やかにしなくてはならない。常時保育児の保育よりも手厚い体制が必要であり、現行の一時預かり事業の補助金では、十分な人員が配置できないという声も上がっている。

また、一時預かり事業の専用室をもっている園では、その設備や人員を活かすことができるが、従来の保育体制のもとで定員の空きを活用する場合には、やり方によっては保育者や在園児、利用児童にとって負担が大きくなってしまう。

そもそも待機児童対策のために面積基準ギリギリまで子どもを詰め込んできたような施設では、きゅうくつな環境になってしまっているところもある。そんな施設では、子どもが自分のペースで遊んだり生活したりできるように、むしろ定員を減らしてゆったりしたスペースを確保することを優先すべきではないか。

子どもの育ちを豊かに支えたいのであれば、こういった人員配置や保育室面積などの環境面も充実させて保育の質を上げなければ意味がない。しかし、特に人員配置の充実には、保育士不足という現実が立ちはだかる。

保育士不足がすべての足かせに

2024年度から保育士の配置基準も改定されることが発表された。これまで4・5歳児30人に対して1人の保育士を配置するという基準だったが、25人に対して1人配置しなければならなくなる。

3歳児も20人に対して保育士1人だったが、15人に対して1人という配置になる(3歳児については2015年以降、雇用できた施設への人件費の加算が行われてきたが、今回、正式に基準改定となる)。

このような保育士配置の改善は、保育の質を向上させるとともに、保育士の負担軽減につながり離職を減らすことに寄与することが期待されている。しかし、この基準改定にも保育士不足への配慮から「当分の間、従来基準での運用も認める」というただし書きがつけられている。

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