日本人の会話から「ことわざが消えている」深い訳 「いったい何のこと?」薄まる比喩の共通認識
東洋経済オンライン / 2024年1月25日 9時0分
スマホ社会の現代日本。
若者たちは黙々と動画やゲームの画面と向かい合い、用事は絵文字を含む超短文メールを素早く打つばかり。
時間を割いて他人と会って話すのは「タイパが悪い」とすら言う彼らと、「生きた」日本語の距離がいま、信じられないくらい離れたものになっています。
言い換えるならそれは、年配者との間の大きなコミュニケーションの溝。
「日本人なのに何故か日本語が通じない」という笑えない状況は、もはや見過ごせませんが、「その日本人同士と思うところが盲点」と話すのは、言語学者の山口謠司氏。
『じつは伝わっていない日本語大図鑑』と題された一冊には、日本人ならハッとする指摘が満載。
その中から、会話が通じない「落とし穴」になりがちな日本語の興味深い例を紹介してみましょう。
知ったかぶりでは会話が空回りするだけ
「肩で風を切る」「海老で鯛を釣る」「鬼の居ぬ間に洗濯」「絵に描いた餅」……。
世の中のことわりや人生の機微を簡潔にすくい取っている諺(ことわざ)の数々も、画面上の超短文や絵文字だけで事足りるスマホ社会では、登場することがめっきり減っています。
そうした諺の類は、ゆったりと交わされる会話でこそ挟まれるものだとしたら、今や人と向かい合って話すのは時間の無駄とすら考える若者たちに、諺の知識が身に付くはずもありません。
諺以外にも、日本語には、じつに巧みな喩えで本来の意味を込めた言い回しが他にもたくさんあり、昔はごく自然に誰もが「ああ、それそれ」と比喩を共通に理解していました。
けれども、それはもう、離れた世代間では通用しない――と思えます。
若者たちが「生きた日本語」からどんどん遠ざかれば遠ざかるほど、諺の使用は減るばかりで、理解する日本人の数も比例して減っていくことは必然と言えましょう。
日本人が取り交わす会話はやがて、それこそ砂を噛むような味気ないものになる……と言ったら、少し脅かし過ぎでしょうか。
たとえば現在も多くの職場で、シニアの上司は若い部下に向かって、こんな言葉を発したりしてはいませんか。
「それでは角が立つ」
「いつ目鼻がつくのか」
「二枚舌を使う人には気を付けて」
「薄氷を踏む思いだった」
「呑んで掛かると失敗するぞ」
――などなど。
このままでは会話のズレは広がる一方
ひょっとして若い部下には、その意味するところが伝わっていない可能性が大です。
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