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顔が溶ける病「水がん」患う少女に笑顔が戻った訳 17億人が苦しむ「顧みられない熱帯病」の正体

東洋経済オンライン / 2024年1月25日 11時30分

モザンビークのNTDsクリニックで患者をトリアージするMSFの看護師(©MSF/Pierre-Yves Bernard)

「顧みられない熱帯病(NTDs)」と呼ばれる病気の一群がある。主に低・中所得国の熱帯地域を中心に蔓延し、毎年何百万人が罹患し、何十万人が亡くなり、そして約17億人が影響を受けている。

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顧みられない(Neglected)病気

NTDsに罹患すると、命の危険があるばかりでなく、失明や歩行困難などの身体障害が残り、社会からの阻害や経済活動への支障を招いて、貧困から抜け出せない原因にもなる。だが、主に途上国の僻地や貧困層に蔓延する疾病であるため、予防・診断・治療法の研究開発が遅れ、まさに「顧みられない(Neglected)」でいる。

国境なき医師団(MSF)は、そんなNTDsに苦しむ人びとを目の当たりにしてきた。

1月30日の「顧みられない熱帯病の世界デー(World Neglected Tropical Diseases Day)」に向け、MSFのベヒシュタイン紗良(日本メディカル・アフェアーズ担当マネージャ)が、紹介する。

NTDsはWHO(世界保健機関)が定めたデング熱、アフリカ睡眠病、ハンセン病などを含む20の疾患群で、多くは、昆虫やダニなどに寄生する病原体を介して人に感染するものが多いが、毒ヘビにかまれた傷(ヘビ咬傷:こうしょう)も含まれる。

蔓延地域では脅威となる疾病でありながら、国際社会では製薬会社、政治からは顧みられなかった。さらに、新型コロナ感染症の流行拡大で、多くの国が自国の新型コロナ対策に予算を充てた結果、NTDs対策への資金が削減された。

例えば、NTDs対策に出資する数少ない国の1つイギリスは、2021年にNTDsへの出資を大幅に減らし、新型コロナや新興感染症への対応を優先した。これによりNTDs対策を進めてきた人びとは苦境に立たされた。

年間200万人が被害「ヘビ咬傷」

NTDsの中でもひときわ特殊で対策が難しいのが、ヘビ咬傷だ。

WHOによると年間約200万人以上が毒ヘビにかまれ、うち8万~13万人が亡くなる。また、その3倍近くが手足の切断など、深刻な後遺症を患う。アフリカ、アジア、南アメリカで多く発生し、女性や子ども、貧しい農村部の人々が被害に遭う。特に子どもは体が小さいため毒のまわりが早く、大人よりも深刻な結果になりやすい。

ヘビ咬傷は、適切な抗毒素で処置すれば死や後遺症を回避できるが、実際は多くの人が亡くなっている。

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