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群馬テレビ「社長解職劇」、限界に達した社員たち 過度な経費削減に問題発言、組合との攻防の末

東洋経済オンライン / 2024年1月25日 7時20分

事態が動き出したのは、2023年8月30日に労働組合が会社に対する「要求書」を提出してからだ。

組合は会社に対し、「県の取材なんか全部シャットアウトしたらいい」などといった武井氏の数々の発言に対する見解や、過度な外注削減による社員負担増の是正、頻繁に繰り返される人事異動の適正化を求めた。

組合の前島将男委員長によれば、「人事異動は従来1年に1回だったが、(武井氏の)社長就任2~3年目から2回、3回と徐々に増えていき、最終的には毎月人事異動があった」という。

組合の要求に対し、会社側は約1カ月後の9月27日に次のような回答を提示した。

「利益確保を目的に一定の個別採算や将来の取引期待等も念頭に取材活動を行うことは必然」

「(外注削減による)内製化は経費削減策の代表的手段であり、社員のいっそうのスキル向上にもつながる」

「人事異動を『業務負荷が荷重となる』等々否定的な面だけをとらえず、前向きなチャンスとしてとらえる発想に変えることができれば、仕事をいっそう楽しむことができる」

一方的とも受け取れる内容の回答を受けとった同日夜、組合は会社との臨時団体交渉に臨んだ。組合側によればこの交渉も社長の「独演会」状態で、議論は空転したのだという。

「膠着状態」に取締役も危機感

組合は最終的に不誠実交渉に該当するとして、10月18日に群馬県労働委員会への不当労働行為救済申し立てを実施した。同日に記者会見を開き、ここで初めて、社長の問題発言などが表沙汰となる。

その後も約2カ月にわたり組合と社長による抗争状態が続いていたが、ついに12月22日、取締役会で武井氏の解職が決議されることになった。

組合が労働委員会に救済申し立てを行った場合、労働委員会が労使の間に入る形で仲裁を行い、紛争解決に導くのが通常だ。しかし今回のケースでは、県の仲裁を待つ前に、取締役会が社長を解職させる事態に発展した。

新社長に就任した中川氏は「組合の要求に対し、(武井氏)本人が答えようとせず膠着状態に陥った。私も(武井氏に)意見を申し上げたが、本人は『直接答える機会は作らず、このまま進めよう』という考えだった」と話す。こうした状況に取締役の間でも危機感が募ったことが、解職の緊急動議へとつながったようだ。

解職された武井氏を含め、群馬テレビではこれまで、大株主である群馬銀行の出身者が社長を務めるのが慣例となっていた。1986年に群馬テレビに入社した中川氏は、生え抜き組として初めての社長となる。

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