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「キャリア官僚→アマゾン」彼が15年で得た学び ロビイストの実態、どんなことが求められるか

東洋経済オンライン / 2024年1月26日 15時0分

そうなると公共政策チームの行動も「静的(スタティック)なロビイング」とは異なる「動的(ダイナミック)なロビイング」となる。

「動的なロビイング」の1つの特徴は、公共政策チームが取り扱う課題が固定的なものではなく、年々、場合によっては四半期単位で変化し、かつ、その範囲が拡大傾向にあるということである。

物販のインターネットショッピングであれば、消費者保護、薬事、食品・製品安全、資金決済、物流などに関わる政策課題が中心になるが、デジタル系のサービス(コンテンツ配信、デバイス販売)やクラウドコンピューティングサービスが加わると、セキュリティ、著作権、個人情報保護、電気通信、コンテンツモデレーションなど、さらに政策課題に広がりが出てくるし、また、同時にアマゾンという企業の行動に新たな注目が集まることにより、競争政策、環境エネルギー、人権といった公共政策分野の対応の重要性が増してくる。

繰り返して申し上げるが、これらの公共政策上の課題が非常に速いスピードで生じるのである。実際、今から10年以上前に私が手掛けていた公共政策上の案件と今アマゾンが抱えている案件を比較してみると、隔世の感がある。

加えて、デジタルプラットフォームと呼ばれる新たなビジネスモデルやこれまでに政策立案者が想定していなかったような新たなテクノロジーに対して、共同規制のように各国の規制当局がこれまでの規制のフレームワークにあてはまらないような新たな提案を行ってくることにも対応が必要となってくる。

テック企業が生み出す新しいテクノロジーやサービスというものは、既存の法制度が想定していない、つまり法律とテクノロジーとの間にギャップが生じるので、どうやってこれらを規律していくべきなのか、あるいは、政府と企業が共同してガバナンスをしていくべきなのかという新たな課題に直面することもしばしばである。

政府の政策提案に辛抱強く働きかける

製薬や電気通信などの「静的なロビイング」では、政策立案者側に規律のノウハウが蓄積されていることが多いため、ロビイング活動も毎年同じようなルーティンなものになりがちである。しかしながら、テック企業が手掛ける「動的なロビイング」の世界では、新たなビジネスモデルや技術についての情報は圧倒的に企業側が有しており、官民での情報格差が極めて大きい。

従って、時代遅れの法制度や現場感覚からずれた不条理な政府側の政策提案に対して、何度も辛抱強くテック企業側が働きかけることによってようやく合理性のあるガバナンスの枠組みが確立することになる。

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