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実写化「ゴールデンカムイ」驚嘆の感想で溢れる訳 原作漫画ファンも初見の人も圧倒されたこれだけの理由

東洋経済オンライン / 2024年1月26日 12時0分

ちなみに、このように外的要素と内的要素にあるギャップがキャラクターの魅力につながることは多い。アシリパも見た目は子どもなのに、内面が大人びているなど、そういったギャップが魅力につながっている。

杉元の場合も「不死身でありながら繊細」であることが物語が進むにつれてわかっていき、その人柄に引き込まれていくのだ。

ちなみに、そんな杉元の人間性は、映画ではリアリティが増し、山崎賢人の好演が光ったと思う。山崎賢人という俳優は、『キングダム』『今際の国のアリス』などをはじめ、多くのマンガ原作作品に主演しているが、その存在自体が、マンガ原作を実写で成立させる説得力を持つ稀有な俳優となっている。

杉元とアシリパの価値観の対立

そんな杉元がアシリパの影響で抱く葛藤とは「人を殺す是非」である。日露戦争でたびたび重傷を負いながらも多くの敵を倒してきた杉元は、「俺は不死身の杉元だ!!」と連呼するが、「殺すなら私は協力しない」というアシリパの凛とした眼差しが深く刺さる。

これまで散々人を殺してきた杉元には、目的達成のためにはどんな悪いこともするという覚悟があるが、当然葛藤もある。「人間を殺せば地獄行きというならば、自分は特等席だ」と自嘲気味に話す杉元だが、戦争から始まっている今作では、この正解のない問いが突きつけるものは大きい。

アイヌ文化も相まって、単にエンターテインメント的に殺し合いのドンパチをするだけではないのだ。実際、アシリパの影響で、杉元は人殺しを躊躇いつつも、相手が自分を殺しに来ている時には、そうも言っていられない。その事実は、まだ幼く外の世界での経験が少ないアシリパにとっても、向き合わなければいけない矛盾だ。

アイヌにおいては命を粗末にすると「ウェンカムイ」になるといい、汚れた存在を意味する。これは仏教や神道における「ケガレ」にも似た概念で、われわれ日本人には馴染みのあるものと言えるだろう。

杉元の脳裏に思い出されるのは、戦争後、故郷に立ち寄った時のことだ。目を患ったが匂いには敏感な幼馴染に、久しぶりの再会にもかかわらず気づいてもらえないという事態が起きる。戦争で変わり果てた杉元は、まさにケガレたかのように、匂いが変わってしまったのだ。戦争によって汚れた自分に対して、杉元は言いようのないつらさを抱えている。

映画ではそんな杉元とアシリパの「握手」が象徴的に描かれ素晴らしかった。2人が、共に手をとって向かっていく先に何があるのかが、この作品のテーマとも言える。

五感を刺激される気持ちよさ

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