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実写化「ゴールデンカムイ」驚嘆の感想で溢れる訳 原作漫画ファンも初見の人も圧倒されたこれだけの理由

東洋経済オンライン / 2024年1月26日 12時0分

ちなみに、上記に「匂い」のことを書いたが、この作品は料理が美味しそうに描かれていることも魅力の一つだ。料理シーンではいかにも匂いが漂ってきそうであり、レシピまで描かれている。

また「オソマ(うんこ)」も、原作や映画ではとても上手に使われていた。原作の中でも、最高調味料のように扱われていた「味噌」と対比して登場していた。アシリパは味噌を美味しそうに食べる杉元を信じられないとずっと嫌がっていたが、やがては食べて「美味しい」と言う。

映画においても、ユーモラスなシーンとして描かれていたが、私にはとても重要なシーンに思えた。

見た目における思い込みや差別を身をもって越えていく、というと大袈裟に聞こえるかもしれないが、ある意味ではうんこは「生と死」を併せ持つ象徴のようなものと言えるだろう。

その他、映画ではよりリアルであったが、凍てつく北海道の寒さや、火のありがたさ、容赦ない風、雪を踏みしめる音など、これほどまでに五感すべてを刺激してくる作品も珍しいのではないか。

伝わってくる、原作漫画への強いリスペクト

当然ながら、原作マンガは映像化されるために作られているわけではない。そのまま映像化していけば、都合よく映画の長さになることなどありえない。そうすると、良いシーンだけピックアップして、贅沢に作りたいと思うのが作り手の感情とも言える。

しかし、今回の映画では原作リスペクトの姿勢が鮮明であった。まるで熊の調理に無駄がないように、勝手飛ばして先に行くのではなく、原作3巻までを隅々まで使用していた。

おそらく、3巻までを原作にした今回の映画のストーリーではクライマックスに苦労したのではないか。ある意味では「主人公が救われる」クライマックスは、観客に物足りなさを感じさせかねない展開だったが、アクションシーンとしてうまく昇華していたと思う。

また、主人公の秘めた思いをクライマックスに持っていき、杉元とアシリパの「握手」を原作以上にフィーチャーして見事に納めていた。

その他、印象的な「熊の穴からの1カット長回し」であったり、熊や狼など動物のCGなどは、かなりレベルが高いと感じたし、衣装はもちろん、雪の撮影の中で現場スタッフの苦労も通常の作品では想像もできない次元だろう。

SNS上には原作ファンたちが支持する声も多数見られる。原作に遜色ないどころか上回るほどのキャラクターたちの完成度などが賞賛されている。

それらも含め、すべてが原作をリスペクトしつつ、そうでない初見の人にも届く次元まで高められていた。同じ主役、脚本家で大ヒットとなった『キングダム』といい、この制作チームやそこに集ったスタッフの創造性は本当に素晴らしい。

近年、日本のアニメは好調で、それを支えるのはマンガ業界の才能だと思うが、大作マンガを実写にする”変換力”が『るろうに剣心』以降、すさまじく上がっていると思うのは私だけではないはずだ。

実写化の”変換力”はますます上がる

CGなどを含めた技術の向上もあるが、どういう風に実写として表現するのかというノウハウというものが競争の中で高まってきていると感じる。今後もこのようなマンガ原作の素晴らしい実写映画がたくさん出てくるのではないか、新しい時代すら感じさせる。

その意味では、アシリパの下記のセリフは、この原作と今回の映画を象徴するようである。

「アシリパという名は父がつけた『新年』という意味だが『未来』とも解釈できる。わたしは新しい時代のアイヌの女なんだ!」

たちばな やすひと:プロデューサー

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