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世界を蝕む「不等価交換」と「外部化」とは何か? 資本主義を乗り越えた先にある「脱成長」の社会

東洋経済オンライン / 2024年1月29日 11時0分

労働者たちの賃金を抑え、さまざまなエネルギーや資源、土地などを徹底的に利用し、奪うなど、グローバルノースは、依然としてある種の植民地支配を続けています(写真:ヒロコロ/PIXTA)

環境破壊、不平等、貧困……今、世界中で多くの人々が、資本主義が抱える問題に気づき始めている。経済人類学者のジェイソン・ヒッケル氏によれば、資本主義は自然や身体をモノと見なして「外部化」し、搾取することで成立している、「ニーズを満たさないことを目的としたシステム」であるという。そしてヒッケル氏は、「アニミズム対二元論」というユニークな視点で、資本主義の歴史とそれが内包する問題を白日の下にさらし、今後、私たちが目指すべき「成長に依存しない世界」を提示する。今回、日本語版が昨年4月に刊行された『資本主義の次に来る世界』について、東京大学大学院准教授で、『人新世の「資本論」』の著者の斎藤幸平氏に話を聞いた。前編と後編の2回に分けてお届けする。

脱成長は世界的トレンド

新世代の脱成長論の第一人者として世界的に注目されているバルセロナ自治大学のジェイソン・ヒッケル氏は、マルクス主義や社会主義の伝統から強い影響を受けています。

【写真を見る】成長を必要としない次なる社会を描く『資本主義の次に来る世界』

実際、気候変動問題の根幹には資本主義そのものの矛盾があり、本当に解決するのであれば、資本主義という無限の経済成長に駆り立てられたシステムを乗り越え、脱成長型の社会に移行しなければいけないというメッセージをはっきりと打ち出しています。

私自身も、ヒッケル氏に影響されて、『人新世の「資本論」』(集英社新書、2020年)では、コミュニズムと脱成長について書きました。

若い世代による新しい脱成長論は、今、世界的なトレンドになりつつあり、ヒッケルたちの研究チームは、EUから億単位の研究費をもらうようにまでなっています。経済格差だけでなく、気候変動、生物多様性などの生態学的危機も深まるだけなく、資本主義が再び問題視されるようになっているのです。

ヒッケル氏の『資本主義の次に来る世界』は、資本主義の問題点を解決するために脱成長が必要だという説明が非常にわかりやすく、いろんな読者に伝わるように書かれていますね。

本書の特徴として、「アニミズム対二元論」という視点が打ち出されています。近代には、社会と自然、人間と自然、西洋と非西洋、文明と野蛮などの二元論があり、それによって近代特有の植民地支配、自然の支配、女性の支配などが行われてきたという世界観を示し、それを批判しています。

その上で、二元論を乗り越え、非西洋的な幸福の在り方を示す世界観を提唱しています。これは、ジェレミー・リフキンの『レジリエンスの時代』(集英社、2023年)でも打ち出されており、近年では、環境正義を論じる上で一つの基本的立場になりつつあります。

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