バイデンの存在薄くなる3年目のウクライナ戦争 「ロシアが攻めてくる」欧州の危機感に応えられない
東洋経済オンライン / 2024年1月30日 7時0分
筆者は反攻開始以来、アメリカ政府とウクライナ側の間で続いていた反攻戦略をめぐる対立について、「ウクライナが奪還作戦実行で感じた『手応え』」(2023年9月5日付)などで伝えてきた。
東部ドンバス地方や南部ザポリージャ州、ヘルソン州で反攻作戦を続けているウクライナ軍に、南部に集中するようアメリカ軍が求めたのに対し、ウクライナ軍は東部奪還の失敗につながると一貫して拒否してきた経緯がある。
アメリカの戦略を疑い始めたウクライナ
実際問題として、ロシア軍はこの間、プーチン氏が厳命していた東部ドンバス地方の完全制圧のため猛攻を続けている。ウクライナ軍がこれを跳ね返すことができたのは、東部で十分な兵力を維持してきたためだとの自負がある。逆に言えば、アメリカによる戦略提案への懐疑があるのだ。
しかし、今回バイデン政権が打診してきたクリミア集中案は、キーウ側に対し、東部のみならず、南部の領土奪還作戦の延期を迫るものだった。これによって、ゼレンスキー政権のバイデン政権への不信感が一層深まった。
不信感を深めさせる材料はこれ以外にもあった。これまでウクライナの防衛支援をめぐる関係国会合で決まり、アメリカ国防総省が行うはずだった支援がホワイトハウスの意向で断念させられていた事実が漏れてきたからだ。
ウクライナの立場に寄り添う姿勢が目立っていたオースチン国防長官が長射程の地対地ミサイル「ATACMS」(エイタクムス)を供与するという提案を、ホワイトハウスが却下していたという。
先述の軍事筋は、こうした動きについて「アメリカ政権には統一された司令部は存在しない。自分たちの戦争とは思っていない」と指摘した。さらに「そろそろ戦争をやめたらどうか、とキーウに言ってくる準備を始めたのだろう」とも見る。
アメリカ有力メディアの中には、アメリカ側の新戦略案として、2024年は領土防衛に徹し、占領地奪還の攻勢に転じるのは2025年にすべきとの案があることを報じている。ホワイトハウスがウクライナ側に圧力を掛けるために意図的にリークしたのだろう。
しかし、2024年11月のアメリカ大統領選でバイデン氏再選が危ぶまれている状況で、2025年に攻勢に転じるとの戦略をウクライナに提示したとしても、真剣に受け入れられるはずはない。むしろウクライナには無責任な提案と映る。
なぜなら2025年1月にホワイトハウスの主になるのは、プーチン氏と良好な個人的関係があるとされるトランプ氏との見方が根強いからだ。
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