バイデンの存在薄くなる3年目のウクライナ戦争 「ロシアが攻めてくる」欧州の危機感に応えられない
東洋経済オンライン / 2024年1月30日 7時0分
こうした事象が指し示すことは何か。それは、欧州安保の保障者としてのアメリカの地位および信用度の低下である。
そのため欧州では、2国間安保協定以外にも「自らの平和は自らの手で守る」という覚悟を示す行動が広がっている。象徴的なのが2024年1月末にバルト3国やポーランドを主な舞台として始まった冷戦終結以来で最大規模といえる軍事演習だ。
ロシア軍による侵攻を想定したもので、9万人規模の部隊が参加する。NATO演習である以上、アメリカ軍部隊も参加するが、想定といい、演習場所といい、極めてリアルであり、従来の演習以上の危機感が伝わってくる。
2024年に入り、欧州各国の軍部からはロシアによる欧州攻撃の可能性を警告する発言が相次いでいる。ドイツのピストリウス国防相は、ウクライナ戦争がバルトなどに広がる可能性を指摘した。
イギリス軍高官も、現在のウクライナ情勢が第1次世界大戦やナチス・ドイツによる欧州侵攻の前夜に似ていると指摘。イギリス軍の兵力を倍増する必要性に言及した。
しかし、バルト3国やポーランドはウクライナと異なり、NATO加盟国である。NATO条約第5条には、加盟国の1つに対する攻撃は全加盟国への攻撃とみなす、とある。この条項を踏まえ、これまではロシアがアメリカとの直接の開戦を恐れて、バルト3国などを攻撃する事態はありえないとみられていた。
しかし、アメリカの支援を受けたウクライナの反攻をロシアが力で食い止めたことを受け、欧州の認識は大きく変わった。自国の軍事力に自信を持ったプーチン氏がNATO加盟国であるバルト3国でさえも侵攻の対象にするとの懸念が出始めたのだ。
トランプ政権再登場の可能性があるアメリカが、今後バルトが攻撃されても、ロシアとの戦争で自国の安全まで犠牲にする形で本当に守ってくれるのか、確信を持てなくなったからだ。
一方でウクライナにとって、2024年における最大の目標は何か。軍事面ではゼレンスキー政権が、バイデン政権の慎重姿勢をよそに改めて攻勢を掛ける可能性が相当ある。春には地上作戦開始に不可欠だったF16部隊がウクライナに到着する可能性があるからだ。
F16があれば、制空権を獲得し、南部などで地上作戦を開始できるようになる。目立った戦果を示すことで、ウクライナ軍の反攻能力を国際的に示すと同時に、ウクライナへの軍事支援継続に対する支持論を米議会でも高める政治的効果を狙うのではないか。
この記事に関連するニュース
-
ウクライナ「領土割譲やむなし」初の3割超でゼレンスキーに和平の選択肢
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月24日 16時55分
-
焦点:戦争は「素人大統領」をどう変えたか、苦悩増すゼレンスキー氏
ロイター / 2024年7月18日 17時28分
-
金正恩がロシアに工兵部隊の派遣を約束した! プーチンの対外強気発言の裏に潜むもの
東洋経済オンライン / 2024年7月9日 16時0分
-
同床異夢の露朝新条約、危険な金正恩の「誤信」(上)
Japan In-depth / 2024年6月28日 11時8分
-
EU、ウクライナとの安保協定に署名 首脳会議
ロイター / 2024年6月28日 1時37分
ランキング
-
1ペットボトル収集車から遺体で見つかった男性 買い取り業者の47歳社員と判明 積み込み作業中に誤って巻き込まれたか
CBCテレビ / 2024年7月26日 20時14分
-
2小5が校外行事で意識不明 頭蓋骨骨折、2段ベッドから転落か
毎日新聞 / 2024年7月26日 21時57分
-
3大雨警戒続く山形 20代巡査長の死亡確認 高速道路陥没も
毎日新聞 / 2024年7月26日 20時32分
-
4「海自逮捕」防衛相報告資料に記載=次官に口頭で説明―不正受給
時事通信 / 2024年7月26日 22時19分
-
5西山ファーム元代表に有罪判決=「首謀者として主導」認定―名古屋地裁
時事通信 / 2024年7月26日 18時4分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)