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「やりたいことは副業で」と盲信する人が陥る罠 副業でも、やりがい搾取されることは十分ある

東洋経済オンライン / 2024年1月31日 12時20分

(本田由紀『軋む社会 教育・仕事・若者の現在』河出書房新社)

「やりがい」を求めないほうがいい理由

つまり、「やりがい」を仕事に求めすぎると、むしろ「やりがい」しか仕事になくなってしまう。本田が警鐘を鳴らしたのはそこだった。

たしかに、この「やりがい」を求めすぎる若者に対して、企業では「やりがい」を満たさなくていいんだ、という声掛けは有効に働くだろう。実際、『やりたいことは「副業」で実現しなさい』の作者もまた、「副業を始めて、やりたいことが満たされてくると、『会社も思いの外、悪いところではないな』と思える心のゆとりが出てくることもあります」と語っている。たしかに会社に求めるもの――賃金や福利厚生ややりがい――の一部を副業に分散させる、という手段は悪いものではないだろう。

しかし一方で、それでは副業に「やりがい」を求めた時、副業ならば「やりがい搾取」されることはなくなるのだろうか?

つまり、本業にも「やりがい搾取」の恐れがあるのと同様に、副業にも「やりがい搾取」の恐れは存在しているのではないか。私はそこを考えたいのだ。

というのも、前回紹介した兼業デザイナーの飯塚さんが副業をやってみて感じた困難は以下のものがあった。

・予期していなかった、膨大な量の修正が発生

・連絡がメールではなく電話

・価格交渉ができず、低い賃金のままになってしまっている

これらは、一般企業であれば「やりがい搾取」と呼ばれるような状態ではないだろうか。たとえば上司がいつでも電話で連絡してくるだとか時間外労働として修正を要求してくると言われたら、誰だって「けっこうブラック企業だね!?」と言う人は多いのではないか。さらに賃金が不当に低いというのも、本田が「やりがい搾取」の企業の代表例として挙げた状態だ。

会社だったら「やりがい搾取」だと言われる状態が、副業では「やりがい搾取」と言われづらい。

副業は「やりがい搾取」に気づきづらい

なぜなら副業は、個人間の契約であることが多く、客観的な労働環境のチェックをする人がほぼいないからだ。個人間の契約であれば、「その仕事はあなたがやりたくてやっているんでしょう」と言われても仕方がない。しかし同じことを会社員でブラック企業に苦しむ人に言えるだろうか? 

会社員であれ個人事業主であれ、不当な労働量を求める労働環境は、改善されるべきなのに。

正直、私自身も自分が副業していた時のことを考えると、自分で自分にブラック労働を課していたのではないか? という気持ちになってくる。一社一社の出版社との契約は決して不当ではなかったけれど(きちんと原稿料はもらっていたので)、だが労働量が適切だったのか、という問いに関してはまったくもって……自信がない。だけどそんなことを考えている余裕はなかった。

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