がん死した男が名乗った逃亡50年「桐島聡」の人生 警視庁公安部は死亡した男性のDNA鑑定を急ぐ
東洋経済オンライン / 2024年1月31日 11時30分
瀕死の状態の男が病床で名乗ったのは半世紀前、日本中を震撼させた爆弾テロ犯の名前だった。全容解明が待たれるなか、過激派の動向に詳しい元警視庁公安部員の勝丸円覚さんが、逃亡の軌跡、名乗り出た理由を分析する。
【写真で見る】交番に張り出されていた桐島容疑者の指名手配ポスター
最期は本名で迎えたい――
最期は本名で迎えたい――。
警察庁関係者によると、病床に伏していた男は病院関係者にこう語ったという。
1月25日。神奈川県鎌倉市内の病院に入院していた男が、連続企業爆破事件に関わった桐島聡だと、病院関係者に名乗った。このことは直ちに病院から神奈川県警を通じて警視庁公安部に報告された。
警察庁関係者によると、男は今月中旬、路上にうずくまっているところを通行人の男性に保護され、その後、自ら救急車を呼んで入院。症状は末期の胃がんだった。
健康保険証は持っておらず、「内田洋(うちだ・ひろし)」と名乗り自由診療で入院していたが、1月29日の朝、入院先の病院で死亡が確認されたという。
この男が本名として明かした桐島聡――桐島聡容疑者(70)は、1970年代に数々の企業爆弾テロ事件に関与した疑いがあり、警察当局が重要指名手配して、この半世紀行方を追ってきた人物である。
誰もが一度は目にしたことがあるかもしれない、黒縁眼鏡のある男性の写真。全国各地の駅などに張り出されている指名手配ポスターに、桐島容疑者の顔写真が掲載されている。
警察庁によると桐島容疑者は過激派「東アジア反日武装戦線『さそり』」のメンバーで、1974年から1975年にかけて発生した連続企業爆破事件の1つにかかわっていたとされ、爆発物取締罰則違反の罪で警察庁が重要指名手配し、行方を追っていた。
企業爆破事件では警察官も重傷
元警視庁公安部員の勝丸円覚さんは、この人物の名前を報道で聞いた際に複雑な思いを抱いたという。
「私が公安部員に登用される際に受講した講習を通じて、桐島容疑者のことは熟知していた。一連の企業爆破事件では警察官が重傷を負った事件もあり、在職中は顔、名前に加えて警察が持つ非公開情報を脳裏に刻み込み、発見次第いつでも身柄確保できるよう構えていた」
重要指名手配がかかっていた桐島容疑者。警察当局もその行方を半世紀にわたり追い続けてきた。
勝丸さんによると、桐島容疑者など逃亡中の過激派メンバーの行方を追っていたのは、警視庁公安部公安一課に特別に設けられた「担当班」の公安捜査官たちだ。現在では規模は縮小されているが、50年前から警視級のベテラン管理官のもと、追及捜査にあたっているという。
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