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日本株上昇で最も「得をしている」のは誰なのか 企業が余剰資金を突っ込む株価上昇のカラクリ

東洋経済オンライン / 2024年1月31日 7時40分

(写真:ABC/PIXTA)

10年に一度、一時的な株価の高騰と改革の約束が相まって、株式ブローカーや政治家、そして一部のアナリストが 「日本の復活」を宣言する。その10年がやってきた。だが、今回の「宣言」も、橋本龍太郎、小泉純一郎、安倍晋三の各首相の時代に語られたのと同様、幻想に終わる可能性が高い。

【図表】日本人1人当たりの利益は増えている一方で、賃金は横ばいの状態が明らか

日経平均は2018年初頭から60%上昇しているが、実質GDPの成長は1%増とわずかでしかないうえ、従業員1人当たりの実質報酬に至っては5%減っている。

一般大衆にはほぼ恩恵がない株価上昇

つまり、株価の上昇は日本経済についてはほとんど“語っていない”。むしろ株価が反映しているのは、企業利益の増加と自己株買い(企業が自己株を買うことで株価を上げること)の氾濫である。

つまり、経験豊富な投資家は大儲けできるが、一般大衆にはほとんど恩恵がないというわけだ。

株価は、現在の利益と将来の利益に対する期待の両方を反映しているはずである。利益というのは、売上高の増加や企業効率の改善などを反映したものであるべきだ。しかし、現在の日本ではそうなっていない。

1996年から2023年にかけて、日本の大企業5000社の労働者1人当たりの利益は2倍以上(110%増)になった。ところが、労働者1人当たりの売上高は12%増加にとどまっている。

さらに悪いことに、労働者1人当たりの名目報酬(賃金+福利厚生)は、約30年間でわずか1%しか増加していない(下図参照)。株式市場に上場している企業は約4000社なので、この5000社は近似値である。

消費者が製品を買う余裕がないのに、企業はどうやって製品を売るのだろう?政府が毎年赤字を垂れ流し、ゼロ金利に近い金利を設定し、過剰な円安で輸出を増やすことで、不足している消費者需要を補っているからだ。

昨年の大手企業5000社のROAは1994年水準

コーポレート・ガバナンスの向上が叫ばれて久しいが、企業の効率性は向上していない。生産性を測る最良の尺度の1つに、ROA(総資産利益率)がある。

大手企業5000社のROAは、2023年には1994年と同じ、わずか3.5%で、1976~1990年の5.2%から低下している。私見では、ガバナンスの向上は株主の利益分配に役立つかもしれないが、競争は業績を向上させるはるかに強力な力である。

賃金抑制にとどまらず、企業は現在、過去最高水準の自己株買いという、価格を押し上げるための財務上の手段を用いている。状況によっては、自己株買いは有用な目的を果たすこともあるが、今回氾濫している自己株買いはその1つではない。

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