「セクシー田中さん」悲しい出来事の裏にある現実 ドラマ関係者のバッシング過熱に感じること
東洋経済オンライン / 2024年1月31日 1時15分
今回の真相は、ドラマ「セクシー田中さん」に関わった人しかわかりません。しかし、芦原さんがブログにつづっていた「当初から条件を提示していたにもかかわらず、許容範囲を超える改編が続き、自ら加筆修正を繰り返したこと」「連載中の作品で、まだ漫画の結末も決めていなかったこと」「芦原さんと脚本家は一度も会っていないこと」などの言葉を踏まえると、彼女を取り巻く人々の尊重や配慮の不足、誤解や誤算があった様子がうかがえます。
それを象徴していたのが、今作の脚本家が年末に発信した「最後は脚本も書きたいという原作者たっての要望」というコメント。本当にそう聞いたのか、それとも、うまく伝わらずに誤解を招いたのかはわかりませんが、これがきっかけで芦原さんが釈明の投稿をし、それが“原作の改編に対する是非”などの大きな問題に発展してしまいました。
どんな理由や意図があったにしても、悪意はなかったとしても、わずかな言葉のチョイスが取り返しのつかない事態につながりかねない怖さを感じさせられます。
絵や文字と映像では伝わり方が違う
ここで漫画や小説の実写ドラマ化そのものについてふれておきましょう。
ドラマに限らず漫画や小説を実写化する際、原作をそのままコピーするようになぞることは基本的にほぼありません。「そのまま実写化しても見づらい、感情などが伝わりづらい」「より物語や登場人物の魅力が伝わるようにしたい」「1話45分程度にまとめなければいけない」などの理由から脚色するのは当然とみなされているからです。
そもそも「“絵”や“文字”と“映像”では見る人への伝わり方がまったく違うため、そのままコピーするだけでは、むしろ原作の魅力が伝わらない」というのが共通認識。また、「すでにネタバレしている物語のため、実写化でより見ごたえを出さなければいけない」などの意識もあり、「原作の脚色こそ脚本家の実力が表れる」とみなすプロデューサーもいます。
ただ、原作者の要望に応えるのはもちろん、ファンが支持しているポイントも含め、プロデューサーと脚本家が「ここだけは変えてはいけないポイント」「絶対に入れなければいけないシーン」などの判断を間違えると批判は避けられません。
その点、業界で「脚本家の中で最も脚色がうまい」と言われる森下佳子さんは、昨年よしながふみさんの漫画を実写化したドラマ「大奥」(NHK総合)で、原作の魅力を広げ、俳優の熱演を引き出す脚本を作ったと称賛を受けました。
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