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海外でも「高齢化社会で経済伸び悩む」最大の原因 労働人口の減少が新たなインフレにもつながる

東洋経済オンライン / 2024年2月2日 19時30分

高齢化は経済成長にも影響を及ぼす(写真:Graphs/PIXTA)

高齢化は経済にも影響を与えます。日本の経済が数十年にわたり停滞してきたのは、高齢化による労働人口の減少と無関係ではありません。高齢化の進行した社会において、金利や貨幣価値はどのような影響を受けるのでしょうか。人口学者のポール・モーランド氏が解説します。

※本稿はポール・モーランド氏の新著『人口は未来を語る』から一部抜粋・再構成したものです。

日本は高齢化社会の行く末を知る「未来の実験室」

日本は社会が高齢化するとどうなるかを知るための未来の実験室だと言える。現在、日本人の28パーセントが65歳以上で、この割合は世界でも群を抜いて高い。だが国連の予測を信じるならば、イタリアは2030年、ドイツは2035年ごろ、中国は今世紀なかば、アメリカは2100年にこの水準に達する。

これほどの高齢化社会は誰も経験したことがないが、どのようなものになるのか知りたければ日本を見るのがいちばんである。

ここでは経済を切り口に説明するのがいいだろう。一時は経済の輝く星だった日本だが、1990年ごろに生産年齢人口がピークに達すると、ほぼ同時に経済の勢いも止まった。この唐突で思いがけない停止は、労働人口が減少に転じたことがきっかけだったのかもしれないが、そこからすぐに立ち直れなかったのは、明らかにある人口動態の要素と関係がある。それは、日本が漸進的な人口減少という足枷をずっと引きずってきたことだ。

日本の株式市場は1980年代末に到達した目がくらむような高値を、30年たっても更新できていない。過去30年間で、日本のGDP(国内総生産)成長率が年率2パーセントを超えたのは5回だけだったが、その前の30年間には2パーセントを超えなかったのが2回だけだった。

経済学者が言う「長期停滞」、すなわち先進国世界における経済成長の長期的な鈍化について考えるとき、この状態に陥っている国々のなかで日本が長くリーダー的存在であることを忘れてはならないが、もうひとつ注目に値するのは、日本が高齢化のリーダーでもあり、それが長期停滞と無関係ではないということだ。経済成長の鈍化は持続的な低インフレを伴う。日本の年間インフレ率が2パーセントを超えたのは、過去30年間で二度だけである。

経済は人口の増加を前提に進んでいく

わたしたちが知る経済は、物価上昇と失業のトレードオフに翻弄されながら進んでいくものだが、そのような経済は若い人口の増加を前提にしていたと言っていい。その前提が崩れると、よくても経済は伸び悩む。そして持続的な低インフレと相まって、低金利にも大規模な景気刺激策にもあまり反応しなくなるようだ。実際に高齢化社会は、景気刺激策が打たれても、それで不景気とデフレを防ぐのがやっとという状態になっている。

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