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海外でも「高齢化社会で経済伸び悩む」最大の原因 労働人口の減少が新たなインフレにもつながる

東洋経済オンライン / 2024年2月2日 19時30分

高齢化が進むイギリスでは労働争議の件数が減っていて、1970年代や80年代前半に比べると数分の1でしかない。多くの経済国で完全雇用がほぼ達成されているにもかかわらず、労働争議は減っている。かつて高雇用は労働の戦闘性を保証すると思われていたのではなかっただろうか。どうやら世界経済も、世界人口と同じく、老化しつつあるようだ。

高齢化社会で経済が伸び悩む最大の原因は、労働人口の減少にある。日本はその最たる例かもしれないが、アメリカのように以前は人口増加と経済増加が調和していた国々にもあてはまる。

経済生産高を一人ひとりの生産高を足したものだと考えてみよう。人が多ければ多いほど、より多くのモノとサービスを生産できる。また人の技能や教育水準が高ければ高いほど、より多くのものを生産できる。経済成長は人口増加と生産性向上の両方によってもたらされ、このふたつが合わさったものが「人的資本」である。

アメリカの現状を分析すると、21世紀に入ってからの労働人口増加率の鈍化による影響が、労働人口の教育と経験の増加による影響を上回っていて、その結果、人的資本が経済成長の足を引っ張っていることがわかる。1970〜80年代に、人的資本の増加が年率1.5パーセント以上の経済成長に寄与していたのとは対照的である。

中高年労働者にも利点がある

じつは中高年労働者には利点がある。生産性と収益力のピークはキャリアの後期に訪れるので、中高年労働者のほうが活力は劣るかもしれないが経験は豊富だと言える。また本質的に要求における挑戦性が低いと考えられるので、賃金上昇圧力を、ひいては物価上昇圧力を抑えることにつながる。労働人口の増加が止まれば、職を得るのも維持するのも容易になる。

また経済理論に反して、完全雇用はもはや職場での権利主張につながらないようだ―中高年労働者は対立を求めたがらず、危険を冒したがらない。フランスの黄色いベスト運動は、この国のデモや街頭行動の伝統を存続させる役には立つかもしれないが、近代後のプロレタリアート―そもそもプロレタリアートがまだ存在するとしての話だが―は国家転覆を謀ったりはしない。

また高齢化社会は社会全体の嗜好や要求の変化を伴うので、課題もあるが、起業家や企業に明確な機会をもたらす。たとえばラベル表示の文字を大きくするといった簡単なことで、特定の商品を差別化できる。

高齢化の経済への影響は日本で始まり、急速に世界に広がりつつある。欧米の金利がこれほど長く低水準で推移しているのも、人口変動の影響かもしれない。労働市場に新たに参入する若者の数は減少している。イタリアの25歳未満の人口は、2050年には1980年の半分になりそうだ。韓国でも20代前半の人口が10年前にピークに達し、2050年までには半減すると思われる。

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