日本はこのまま「国家の衰退」を黙って待つだけか いまこそよみがえる、福沢諭吉からの警告
東洋経済オンライン / 2024年2月2日 9時0分
本書は、日露戦争(1904~1905年)の勝利がアジア各地に与えた強烈な印象から始まる。ロシアは西欧ではないのだが、白色人種であることで、有色人種日本人の勝利の衝撃は大きなものであった。マアルーフは語る。
「全世界が発見したこと、それはひとつの国民が、短い間で数世紀の遅れを追いつき、栄光へと歩み出たことであり、周辺的な、とるにたらない伝統的文化を出て、子供たちを無知と貧困から救い出し、彼らにほこりを与えたことであった」(57ページ)
それは日本という国が到達した栄光の時であった。だからこそ、非西欧地域で日本の勝利に、人々は勇気づけられたのである。
非西欧で成功した国の日本
しかし、その日本はやがてその非西欧に背を向け、アジアを侵略し、非西欧の希望の星であることを突然やめてしまう。そして1945年に、第2次世界大戦で西欧に決定的に敗北を期す。マアルーフは、この成長と発展、そして突然の方向転換を問題にする。
これと同様の栄枯盛衰を、日本は再びたどる。アジアで唯一の経済的先進国となった日本が、また突然、成長と発展に逆噴射し、失われた30年を経て衰退し続けるのである。
確かに、これはとてもミステリアスに見える。それは、恐ろしいスピードで発展すると同時に、恐ろしいスピードで衰退もするという、容易には理解しがたい謎の行動を日本がとっているからである。
軍事と経済、その内容は異なるが、日本は戦前と戦後この2つの分野で世界を驚愕させてきた。それはその成長のスピードだけでなく、その衰退のスピードにおいても、まさに世界にとってこの成長は脅威であった。しかし、そこにある種の問題が含まれている。
明治維新からの国家衰退
この問題に対して、マアルーフは、こう述べている。
「歴史家の中には、創設者の世代が去り、遂行すべき明確なビジョンをもたない別の世代のものに置き換わったことで、この逸脱を説明するものがいる」(73ページ)。
ローマ時代のように、明治の初めには優れた人材が豊富にいたというのだ。彼らは世界に目を開き、野心的であった。
ところが大正時代になり、明治維新から40年経つと、そうした人々がことごとくいなくなる。すると、そこに空虚な空間が生まれてしまった。この40年後の日本の状況は、今のわれわれからすれば遠い過去の話かもしれない。
しかし問題なのは、1945年から40年後、すなわち1985年以降の日本に関しては、今の問題である。まさに、失われた30年の言われる時代はこの時代に始まるからである。
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