日本はこのまま「国家の衰退」を黙って待つだけか いまこそよみがえる、福沢諭吉からの警告
東洋経済オンライン / 2024年2月2日 9時0分
1970年代の高度成長期の真っただ中で、自動車や電機製品などの生産で破竹の勢いをもって世界を凌駕していた日本。それはおそらく、戦争直後青年期を迎えた世代による創意工夫と野心が生み出した大いなる成果だといえる。当時の日本は世界に目を開き、野心をもっていた時代だったのだ。
ローマがそうした優れた感性を持つ指揮官を失ったことで衰退したのだとすれば、こうした世代が鬼籍に入ってしまった今の日本が衰退するのは合点がいく。
戦後西欧へ追いつき追い越せというフレーズが、経済的成長という目標につながったのだとすれば、新しく取って代わった世代は、もはやその目標を失ってしまったといえる。
学ぶべき西欧を見失い、なおかつ自分で考えることもできなくなった世代は、大正時代の新しい世代にも似て、もはや野心も指標をもたない世代かもしれない。それが衰退を速めているのかもしれない。
モンテスキューによれば、ローマは技術だけが残り、当面の間はそれだけでなんとか勝利を維持できたが、最後には腐敗が生じ衰退の一途をたどったという。
いかなる方向へ国の舵を取るべきか
1990年代まではなんとかそれまでの余韻で維持できたものが、2000年になって次第に衰退しはじめ、今や腐敗によって完全衰退モードに入っているのだろうか。政治や経済の分野で起こる不祥事や事件は、この衰退のほころびをより広げ、今や佳境に入っているかに見える。
日本は驚異の成長の後、脅威の衰退に進み、そして破局へ至るしかないのか。
もちろん、これは今や日本だけの問題ではなくなっている。日本の衰退の問題とは別に、数世紀世界を支配してきた西欧それ自体の衰退も進んでいるからである。
西欧においても、すぐれた政治家が排出しているとはいいがたい。むしろエリート層の能力の衰退が顕著である。そうしたエリート層では、未來へのかじ取りができるはずもない。
もう一度、福澤諭吉のあの警告を読み直してほしい。それは、「いやしくも、一国の文明の進歩を謀るものは、議論の本位を定め、この本位によって事物の利害得失を談ぜざるべからず」。
福澤は危急存亡の日本の中で、日本の人々に議論の本位、すなわちいかなる方向に舵をとるべきかを、われわれに問いただしたのである。もって知るべしなのだ。
的場 昭弘:哲学者、経済学者
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