「サントリー生ビール」発売1年待たず刷新の本気 変化はわずかだが、一貫した戦略が見える
東洋経済オンライン / 2024年2月2日 7時30分
サントリー生ビールは発売以来、ターゲットを若年層に絞ってきた。多田氏は「すべてのマーケティング施策を若年層に振り切ってきた」と話す。
俳優で20代の山﨑賢人さんや上白石萌音さん、40代の坂口憲二さんを起用した販促活動で、若年層が親近感を持てるイメージの定着に努めた。
さらに「ビールの世界だけでマーケティングをしても、ビールに興味がない人は振り向かない」(竹内氏)との考えから、若年層の関心が高い別領域でのマーケティングも重視した。音楽ユニット「YOASOBI」やアパレルブランド「SOPH.」とのコラボレーションで、若い年代にとって「いろんな場所で目に入る、どこか気になる存在」を目指した。
近年よく指摘されるのが、若年層のアルコール離れだ。ビールも例外ではない。20代、30代のビール購入容量を見ると、10年前と比べて11%程度減っている(インテージSCIデータ)。
とはいっても、今後は50代以上の購入量の増加は期待できない。ビール市場の活性化のためには、若年層のビール離れをいかに食い止めるかが重要になってくる。サントリーが40代以下に照準を定めた理由も、まさにここにある。
2024年は商品リニューアルのほか、コラボレーションや店頭での販促活動などを通じて、若年層向けのマーケティングをさらに強化する方針だ。
サントリー生ビールはこれまで家庭用のみだったが、3月からは業務用の販売も開始する。2024年中に取り扱い店舗数を一気に1万5000店まで広げる計画。そこでも意識するのは、若者層を中心とした「新しいものを価値として受け入れる」消費者だ。
業務用の展開で1つの武器として登場するのが、専用ジョッキとして飲食店に導入する「マグジョッキ」。一般的なジョッキに比べ、ずんぐりとした形のマグジョッキは、横幅があり飲み口が広い。口に入れたときの流量が多くなり、より強いのどごしが感じられるという。家庭用で培ってきた「爽快」で「新しい」印象を、業務用でも伝えることを意識している。
製造体制も強化する。サントリー生ビールの製造設備に約10億円を投じ、これまで2工場だった体制を2024年中に4工場に増やす。そうして2024年の販売数量は600万ケースを目標にする。
10円安い価格設定は「ぜんぜんやる」
競合他社からは、これまでサントリー生ビールの販売が順調だったのは、その価格設定にあるとの声も上がる。サントリーは市販における同商品の店頭想定価格を、他のスタンダードビールよりも10円安く設定してきた。
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