紫式部が青春時代に直面した「悲しい2つの別れ」 母のように接した姉の死と、もう1つの別れ
東洋経済オンライン / 2024年2月3日 11時10分
今年の大河ドラマ『光る君へ』は、紫式部が主人公。主役を吉高由里子さんが務めています。今回は紫式部が青春時代に直面した悲しい2つの出来事について解説します。
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紫式部には、年齢がそれほど違わない姉がいました。生まれて以来、ずっと一緒に暮してきたその姉が、994年頃(式部25歳頃)に亡くなります。
幼い頃に母を亡くした姉妹。式部は、母に甘えるように姉に接したこともあったのかもしれません。
姉が亡くなった傷が癒えなかった
994年前後には、疱瘡(天然痘)が大流行していたので、式部の姉も、この疫病の犠牲者になった可能性があります。大事な人を亡くした式部。その悲しみはなかなか癒えなかったようでした。
妹を亡くした女性と「互いに亡き人の代わりに姉妹になりましょう」と約束。手紙に「姉君」「中の君」(次女、妹)と書き、文通していたようです。
しかし、それぞれが、遠いところに旅立つこととなり、手紙でその別離を惜しむことになります。
式部は歌を詠みます。「北へ行く雁のつばさにことづてよ雲の上がき書き絶えずして」と。「北へ帰る雁に託してください。今まで通り手紙を絶やさないで」というような意味です。
そこには、いつまでも義理の姉妹でいましょうね、それを忘れないでねという式部の想いが込められているように感じます。それとともに、実姉を亡くした式部の心の痛みがスレートに伝わってきます。
この女性からは、返歌がきました。「返しは西の海の人なり」(西の海は西海道のこと。今の九州を指す)と式部は書いているので、文通のお相手の父は、九州のどこかの国の国司に任命されたのでしょう。
文通のお相手の女性は、友達ではなく、式部の親戚だったという指摘もありますが、その女性の返しの歌は「行きめぐり誰も都にかへる山いつはたと聞くほどのはるけさ」というもの。
「任国に下っても、4年の歳月が経てば、皆、都に帰ってきますが(国司の任期は4年)、かえる山・五幡(いずれも地名)と伺っては、本当に遠く離れてしまうことが思われて、いつお目にかかれるかと心細く感じています」と、式部から「姉君」と呼ばれた女性は、式部との再会を心配しています。
ちなみに、かえる山(鹿蒜山)・五幡というのは、越前国(今の福井県)の地名です。このことから、式部のほうは、都を離れて越前にくだることがわかります。式部の父・藤原為時が越前守に任命されたからです。
姉君と慕った女性が遠方へと旅立つ
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