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戦術の使い手、信長にあって義経になかった視点 歴史の偉人に学ぶ「戦術」の遂行に必要なもの

東洋経済オンライン / 2024年2月5日 16時0分

ところが、義経は敵に気づかれないように後ろに回って、いきなり斬りかかれといいます。非戦闘員を的にして狙えといわれても……、と源氏の将兵たちはその卑怯千万な戦法に躊躇してしまいます。その結果、「こんな戦いで勝っても、武士の面目が立たない」という部下の反発を生んでしまいました。

しかし、義経は「勝ったからいいじゃないか」という態度で部下に接し、彼らに自らの戦術の理解を求めようとはしませんでした。

こうした不満をのちに異母兄である源頼朝は利用して、武功のあった義経を徐々に排除していく流れをつくったのではないか、と筆者は見ています。

一方で、無口で冷酷なイメージのある織田信長は、意外に部下への説明やフォローを怠りませんでした。彼も旧態依然とした合戦の方式を、長槍の集団戦術や鉄砲隊などの新戦術によって、一変しています。

義経と違い、信長のやり方を多くの部下たちは支持しました。なぜならば信長は、部下が納得するまできちんと、説明をしたからです。

あなたがリーダーとして新しいことを始めるときは、必要以上にていねいにその意義や方法をメンバーに説明してください。たいていの人は、新しいことをやることを嫌います。

そういう人たちを納得させることができなければ、いくら優れた戦術でも、その効果は半減してしまうものです。

部下に戦術を決めさせた家康

最初に戦術を立てるのはリーダーと参謀ですが、実行するのはチームのメンバー全員です。メンバー全員が戦術の目的・手順を正しく理解し、共有していなければ、戦術の内容いかんにかかわらず、目的を成就させることは難しいでしょう。

徳川家康は、戦術を決める際に、チームメンバーと何度も議論を重ねました。家康はかつて三方ヶ原の戦いにおいて、周囲が籠城を勧めるなか、独断で出陣を決め、武田信玄に完膚なきまでにたたきのめされた経験があります。

1人の人間の知恵と判断力には限界があることを痛感した家康は、知恵を出し合い、討論し、納得することが大切だと学んだのでした。

家康は重臣や中堅を集めて、皆で議論をさせます。自分の中に、すでに確固たる戦術ができ上がっていても、一切、家康は口出しをしません。とにかく、みんなに「どうすればいいか?」と問いかけます。議論が進み、意見が出尽くした頃合いをみて、家康は自分に一番近い意見を選びます。

「ワシは◯◯の意見が良いように思う」

といった具合に。自分も最初からそう思っていたとはいわず、あくまで家臣たちの意見を採用した、という形をとるのです。

そうすれば、家臣たちは自分たちの案が採用されたと思って喜び、頑張って戦おうと決意するはずです。さらに議論したおかげで、戦術についてしっかり理解しているから、戦場でもスムーズに作戦を遂行することができたのです。

ビジネスの現場では、家康とは真反対に、「こうやることに決めたのでしっかりやってくれ」と、一方的に部下に進め方を伝えるリーダーのほうが多いかもしれません。

理解度も、やる気も足りない部下たちが失敗すると、彼らの力不足のせいにしているリーダーは、もう少し戦術の決め方や伝え方を考えたほうがいいように思います。

加来 耕三:歴史家、作家

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