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窮地の国産「和紙原料」から誕生した菓子の正体 お菓子とお茶で地元産の楮(こうぞ)を支援

東洋経済オンライン / 2024年2月5日 12時0分

埼玉県小川町の小川町和紙体験学習センターの裏庭に、なんともいい香りが漂ってきた。最初は草の香り、そのうち芋をふかしたような香りがフワーっと。「かしき開け」「釜開け」というそうだ。90㎝の長さに切りそろえた楮を釜に入れ、2~3時間蒸す。釜から出して、熱いうちに皮をむく作業を行う。

1月28日の日曜日に行われた細川紙技術者協会(内村久子会長、正会員8人)の作業で、研修員を含め15人ほどが集まった。細川紙はもともと、紀伊高野山のふもとの細川村ですかれていたものだが、埼玉県の比企、秩父地方でも作られた。埼玉県小川町と東秩父村に伝わる細川紙の製作技術は、1978年に国の重要無形文化財、2014年にユネスコの無形文化遺産に指定された。国産の楮を使うことが指定の要件になっている。

細川紙の場合、原木の楮のうち、白い皮だけを使う。使う部分は、原木の3%にすぎない。28日はみなで車座になって楮の皮をむき、一番外の黒皮をほぼ取り除いて外に並べて干した。後日、さらに一番内側の白皮だけを取り出す作業に移る。

「光沢があって強靭で、品がある」。細川紙の魅力について、内村会長はそう語る。埼玉県内から小川町に越してきた40歳代のころ、1995年に町が始めた手すき和紙後継者育成事業の第一期生となった。

「それまでは主婦でしたが、地場産業に興味がありました。会社勤めで定年があって仕事が終わるよ、というのではなく、一生できる仕事につきたかった」と内村さんは振り返る。今は東秩父村の工房で版画や書道の用紙を作り、技術者協会会長として後継の育成にあたる。

「地楮を増やしたい」と細川紙技術者協会

小川町には細川紙技術者協会とは別に、埼玉県小川和紙工業協同組合があり、ここでは畑を借りて楮を作っている。生産量は、実質2か所の畑で、年約300キロ(黒皮がついた状態に換算した値)。内村会長をはじめ技術者協会の正会員はその楮を購入しているほか、国内の高知県などから楮を調達している。

一方、技術者協会の技術者研修事業に使う楮は、事務局の保田義治さんによると、「来年度の予算ベースで、和紙工業協同組合から買う地楮は14キロ、高知県から買う分は120キロ」と、地元産の楮はごくわずかだ。協会でも畑を借りて楮を作っているが、最近、土壌改良を行った関係で、生産量が安定していない。

頼みの綱の高知の楮も、作り手の高齢化により、ずっと供給してもらえるかどうかわからない。「協会としては、地元産の楮で細川紙を作り、研修事業も行えればベストと思っています。少しずつ、地楮を増やしていきたい」(内村会長)としているが、簡単ではない。

国内産楮の生産は、全国で激減

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