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親が悩む「性教育」先進校の事例でヒントを探った 6年間で約60時間のカリキュラムを実施する

東洋経済オンライン / 2024年2月6日 11時30分

親が生殖の性を伝えるとしたら、小学校低学年頃までがいいそうだ。「初潮や精通を迎えた子どもにストレートに性教育を行うのは難しい。“性の主体者”と感じる子どもは、父親や母親を大人の男性、女性として見ることになる」(北山さん)からだ。

2年生のテーマ「たんじょう」は、「生殖の性」を学ぶ。子どもたちは自分がどのようにして生まれてきたか、いのちの素はどのようにしてできるのかを知りたいと思っており、それに応える授業はとても盛り上がる。この単元では、本人が保護者に聞き取りをし、その内容をクラスで発表する取り組みをしている。

聞き取る内容は、生まれたときの体重、身長や生まれるときの様子、乳児の頃病気やケガをしたかどうか、などあくまでも客観的に答えることができる内容としている。その聞き取りの中で、「逆子」「破水」「へその緒」など妊娠、出産にまつわるキーワードが出てきて、その後の取り立て授業につながっていく。

この学習は非常にデリケートな部分を含んでいるので、保護者に対しては学年教育講座で学習内容の丁寧な説明を行い、各家庭に聞き取りをすることについては、個別の配慮を必要とする場合など慎重に取り組んでいる。
子どもたちの発表と並行して、出産、性交・受精、胎児の成長、いろいろな生まれ方などの取り立て授業を行い、子ども自身が自分の「たんじょう」絵本をつくるというところまで、なんと年間24時間も割かれる。

出産体験では、「生まれる側から捉えさせたい」という意図のもと、布団カバーと大人用の腹巻きで作った子宮と産道を使って「生まれてくる」体験もする。

本物の胎盤より大きい手作りの胎盤からへその緒をつなげ、へその緒の先をズボンに挟んで、手を使わずに出てくるのだ。

思春期前に、生殖の性を知っておくことで、性の主体者となる高学年で思春期のからだ、こころの変化とともに改めて「ふれあいの性」「支配する性」を学ぶときの受け入れ方は変わってくる。

「からだはプライベートパーツの集合体であり、科学的に学んでいくことが大切。子どもたちの姿を見ていると、幼児期、小学校低学年の時期から「からだの権利」について学んでおくことがとても大切であると感じる。性教育は、生殖の性、二次性徴の学習だけではない。自分自身のからだも周りの人のからだも大切なものであるという感覚を小さいうちから育むことが、SNSでのトラブルにつながる問題に気がつくことにもなるのではないか」(北山さん)

親が性教育を受けていないなら、一緒に学べばいい

北山さんが5年生の授業後に児童へ宛てたメッセージに「からだの仕組みを知ることが、自分自身のからだ、パートナーとなる人のからだを守ることになる」と書かれていた。

これは、性教育を受けていない私たち大人に向けられた言葉のようでもある。

一朝一夕にいかないからこそ、性教育は難しい。しかし、性教育は本来、性犯罪から身を守るために怖がらせるものではなく、将来を幸せに生きるためのお守りになる大切な知識だ。

親が性教育を受けていないなら、子どもと一緒に学べばいい。科学的に学ぶ性教育は、親子の絆を深めてくれるきっかけとなってくれるはずだ。

吉田 理栄子:ライター/エディター

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