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雨風太陽がNPO出身企業で"日本初"インパクトIPO 産直EC"ポケマル"「都市と地方をかきまぜる」

東洋経済オンライン / 2024年2月6日 12時30分

震災がなければ出会わなかったはずの漁師と都市住民がともに汗を流す。漁師は彼らの応援に励まされ、都市から来た人たちは自分の役割を見つけ出し、生きがいを感じていた。

「被災地が助けてもらっているとばかり思っていたら、都会から来た人たちが被災した農村漁村に救われている」

このことに気づいた高橋さんは「都市と地方との交流を災害時だけでなく日常の中に落とし込めれば、日本の抱える課題は解消できる」。そう確信した。

後に高橋さんが提唱し、国の施策にも盛り込まれる「関係人口」の言葉は、このころの被災地での対話の中から生まれたもの。被災地は震災前から人口流出が進み、少子高齢化が大きな課題となっていた。

「元に戻すだけなら、ただの過疎地になる。あのころ盛んに言われた“創造的復興”の芽が出れば、それは日本社会全体の答えになる、そう思ったんです」

政治とは別の方法で社会課題に向き合う覚悟が決まった。

注目したのは「食」。現代の消費社会の中で、主な生産の現場である地方と消費地である都市は分断され、双方が見えにくい。

「生産者は自分の作るものの本当の価値に自信が持てず、業者の言い値で大規模な流通に乗り、消費者は安く大量に買おうという消費行動に走る。ところが、被災地で漁師の人生に触れ共感した人たちは値段なんていくらでもいいから買いたいと言うんです」

それをパッケージにできないかと考えたのだ。

しかしビジネスはまったくの素人。知り合った人たちに自分の思いをぶつけて回った。その情熱を受け取り、形にするため伴走したのが、複数の起業経験を持つ大塚泰造さん(雨風太陽取締役)だった。

大塚さんら多様な経験やスキルを持った人たちの協力を得て、高橋さんは2013年にNPO法人東北開墾を設立。高橋さん自ら東北の生産者を取材し書き上げた誌面とその生産者の作った食べものがセットになった月刊誌『東北食べる通信』を創刊した。

殻付きの牡蠣、土が付いたままの野菜、らせん状のメカブ……。読者のもとには海や畑からとって来たばかりの生産物とともに、生産者の生きざまや哲学、その食材を生んだ地域の風土や歴史がつづられた冊子が届く。

読んで料理して終わりにしないため、生産者と読者とのSNSグループを作ると、そこでの交流が生まれ、熱心な読者がグループの運営を買って出た。

すると投稿を見て生産者の畑を訪ねる人や、神輿の担ぎ手が不足している祭りまで手伝う人たちが生まれた。稲刈りの時期に田んぼがぬかるみ、助っ人を呼びかけた農家のもとにはのべ200人以上の読者が全国から駆けつけた。

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