「旧ジャニーズ」2回の記者会見に共通する失敗 危機管理における説明責任は「被害者目線」
東洋経済オンライン / 2024年2月7日 19時0分
旧ジャニーズ事務所が行った2回の記者会見は、大きな注目とともにその対応のまずさが露呈する結果となり、同事務所の経営を揺るがす事態に発展した。企業広報における危機管理のエキスパートである石川慶子氏に、くだんの記者会見の問題点について、改めて指摘してもらった。
2回の記者会見に共通する被害者目線の欠如という失敗
不祥事における記者会見は、ダメージを最小限にし、信頼回復の第一歩として位置づける役割があります。誰が何をどのように語るのか、戦略的キーメッセージの組み立て力が求められるのです。そういった観点から見た場合、旧ジャニーズ事務所は性加害問題で公式会見を2回開催していますが、失敗しているようにみえるのはなぜなのか考察します。
2回の記者会見で共通しているのは、組み立て軸とすべきステークホルダー(利害関係者)が曖昧になっている点です。危機時に最も重要なステークホルダーとは、旧ジャニーズ事務所の場合、被害者、現役タレント、取引先、報道関係者、ファンといった人々です。問題は、記者会見の場における優先順位の組み立て方にあります。
1回目と2回目の記者会見を振り返ってみます。再発防止特別チームの調査結果が昨年8月29日に公表された直後、1回目の9月7日の会見は、トップが出て調査結果をどう受け止めて今後どうしていくのか、が注目された点でした。藤島ジュリー景子社長が出てきて、被害者へ謝罪し、補償の方針を示したことは評価できる内容でした。ここまでなら、最重要ステークホルダーは被害者だと印象づけられ、キーメッセージが明確です。
しかし取引先へのイメージ回復を急いだのか、人気タレントでもある東山紀之新社長が同席してしまったために、キーメッセージがぶれてしまいました。お詫びと補償、責任をとって社長を辞任するといったインパクトを弱めてしまったのです。東山新社長がもたらすマイナス面の洗い出しもできていなかったのではないでしょうか。それが垣間見えるのが会見の運営です。
廃業と新会社設立を同時発表する違和感
最初に指名したメディアは『しんぶん赤旗』の記者で、世論を代表するメディアではありません。運営会社にメディアの知識が欠如していることを露呈していました。しかも最初の質問は東山新社長のハラスメント疑惑と資質について。一気に流れを作ってしまい、東山新社長のハラスメント疑惑や資質の質問が多発。結果として、ジュリー社長の謝罪と東山新社長と二つの印象が強く残ってしまいました。
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