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「旧ジャニーズ」2回の記者会見に共通する失敗 危機管理における説明責任は「被害者目線」

東洋経済オンライン / 2024年2月7日 19時0分

では、どうすればよかったのか。ステークホルダーを被害者に絞り、ジュリー社長が事実を認め、謝罪、補償の方針、辞任表明、今後のスケジュールを説明し、東山新社長と新体制は改めての発表とすれば、謝罪の印象が強く残ったはずです。ジュリー社長が一人では会見を乗り切る自信がなく、東山氏と井ノ原快彦氏を選んだのでしょうか。だとするなら、二人は新体制を構築するためのプロジェクトメンバーとして登壇させれば、東山氏が新社長にふさわしいかどうかといった質問は回避できたはずです。

2回目の10月2日の会見も同じ失敗を繰り返しました。廃業の発表といった過去への決別としての決意表明という重大な見せ場に軸を絞らず、新会社設立も含めた二つのキーメッセージにしてしまいました。しかも、「SMILE―UP.」、新会社設立(名称はファンクラブで公募)と後ろのスクリーンに表示される形式で華々しい印象となり違和感を与えました。

この時一番重要だったキーメッセージは「廃業」だろうと思います。最初に読み上げられたジュリー前社長の手紙の「ジャニーズ事務所を廃業することが、私が加害者の親族としてやりきらねばいけないこと」「ジャニー喜多川の痕跡を、この世から一切なくしたい」とする内容は、過去と決別する強いメッセージ力で好感が持てました。しかし、ここでも新会社の社長の発表を混在させ、しかも再び東山氏と井ノ原氏が登場するという場面。せっかくの廃業と過去への決別メッセージが弱まってしまいました。

本来なら、最重要ステークホルダーを被害者と定め、被害者救済と社名変更、廃業発表までとし、新会社の体制は別途改めて発表とすれば、会見の中身は被害者の救済や補償に質問を集中させることができたはずです。しかし、新社長・副社長の発表までしてしまったため、質問が新会社まで広がり、救済内容も新会社内容も中途半端になり質問が深まりませんでした。補償や救済の組み立て方を聞きたい記者にも、新会社について聞きたい記者にもストレスがたまり、不規則発言も多くなり、結果として中途半端な印象を残してしまったのです。

なぜこんなことが起きてしまったのか。それはこれらの会見の目的が、新しい体制になったことをなるべく早く取引先に見せたい、といった思惑があったためではないでしょうか。

平時であれば売り上げに直結する取引先は最重要ステークホルダーですが、危機発生時の最重要ステークホルダーは被害者であるとする危機管理広報の鉄則が頭からすっぽり抜け落ちていたのです。彼らにとって未来に必要なのは被害者ではなく取引先だからだとする考え方が見え見えです。被害者はコストであり、マイナス要素だとする発想は、ジャニーズに限らず経営者が陥りやすい心理であって、これはコントロールされるべき表現リスクです。

危機管理における情報公開、説明責任は「被害者目線」

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