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「旧ジャニーズ」2回の記者会見に共通する失敗 危機管理における説明責任は「被害者目線」

東洋経済オンライン / 2024年2月7日 19時0分

危機発生時にダメージを最小限にするための説明責任は「クライシス・コミュニケーション(危機管理広報)」と言われています。平時におけるブランディングやマーケティング活動と同じ発想で情報発信をするとダメージを深めてしまいます。そうならないようにするために実務家によって整理されてきた鉄則があります。鉄則はさまざまあり、筆者も以前は7つの鉄則でまとめていましたが、現場では7つ思い出すのもストレスになると判断し、現在は3つの初動を提唱しています。

一つめが「ステークホルダーの洗い出しと優先順位」です。経営者視点から考えると、旧ジャニーズ事務所の場合、被害者、現役タレント、取引先、報道関係者、ファン、といった方々がステークホルダーになるでしょう。昨年4月のカウアン・オカモト氏による記者会見の後、具体的行動が始まりましたが、当初から取引先が最重要ステークホルダーとして位置づけられていたと思われます。

最初の公式行動は、取引先への見解書配布であり、5月の会社での公式コメントも「被害者に向き合わないと、私たちに未来はない」と、自分たちの未来のために被害者に向き合う宣言をしています。第三者委員会の名称も「再発防止特別チーム」と命名し、事実認定をすっとばして再発防止策を立てようとする印象を与えました。1回目と2回目の会見も謝罪と新社長発表、廃業と新会社設立発表、といった組み合わせで、最重要ステークホルダーがわかりにくくなってしまいました。

危機発生時には、つい自分たちが被害者に見えてきてしまいます。これはある種の自己防衛本能であり、生きるために必要ではありますが、それをコントロールする力が必要です。危機発生時には「被害者は誰なのか」「最重要ステークホルダーは誰なのか」の軸を立て、そして二つめのポイントである「方針」を打ち立て、何を伝えるのかを決めなくてはなりません。

危機管理のプロであってもダメージの収束を早くしたいがために、すべてを出し切ろうとする方針を立て、メッセージをてんこ盛りにしてしまうことがあります。ここに広報のプロが介在する意義があります。言いたいことを絞り、効果的にメッセージを作り、メディアの特性を考慮して、見出しをイメージできる力が求められるからです。

三つめのポイントは「ポジションペーパー」を必ず作成することです。2回の会見で文書化された配布物がなかったこともわかりにくさを増大させたと言えるでしょう。危機発生時には誤解を回避するため、自分たちの方針を記載した「ポジションペーパー」を作成します。

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