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「原油価格は今後も安定」と考えるのは甘すぎる 中東情勢が緊迫化しなくても原油の下値は堅い

東洋経済オンライン / 2024年2月7日 9時30分

バイデン政権はイランと戦う気はないことを明確にしているものの、不安は尽きない(写真:ブルームバーグ)

原油相場が不気味なほど低位で安定している。2月に入っても、国際指標のWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)の3月物は1バレル=70ドル台前半を軸に推移している。だが、結論から言えば、この先は急伸のリスクもはらみつつ、不安定な展開になる可能性がありそうだ。

中東情勢は依然不安定な状況が続く

WTI原油先物価格は昨年10月7日にイスラム組織のハマスがイスラエルに対する大規模な攻撃を行った後、中東情勢が緊迫するとの懸念を受けて1バレル=90ドル台まで値を伸ばした。

その後は一転して売りに押し戻される格好となり、同12月には70ドルを割り込むまでに反落。その後、OPEC(石油輸出国機構)と有力産油国で構成するOPECプラスが自主的な追加減産を行う方針を打ち出したこともあって、12月半ばにようやく下げ止まった後は、70ドル台の比較的広いレンジ内での上下を繰り返す不安定な状況が続いた後、現在は比較的落ち着いた値動きになっている。市場はアメリカの利下げ見送りや中国の景気低迷で、今後も原油需要はさほど増えないのではないかと見ているようだ。

だがイエメンの反政府武装勢力であるフーシ派が、スエズ運河につながる海上交通の要衝である紅海を航行する船舶に対する無差別攻撃を行ったように、中東をめぐる状況は依然安定にはほど遠い。

つい1月28日にはシリアとヨルダンと国境付近にあるアメリカ軍基地に対してドローン攻撃があり、3人の同国軍兵が死亡。アメリカ軍は2月2日にシリアとイラン領にあるイラン関連施設に対して報復を行った、と発表している。今回は一見深刻化しないように見える中東情勢が、やはり原油相場を押し上げるリスクをはらんでいるということを、改めてじっくりと考えてみたい。

現在の一連の中東情勢の不安が、ハマスとイスラエルの対立に端を発していることは間違いない。中東というと、「アラブの産油国」という画一的なイメージがあるが、イスラエルに限って言えば、多くの石油が採れるわけではない。

よって、問題がイスラエルをめぐる戦闘に限定されている間は、実際の石油需給に大きな変化が生じることもない。もちろんパレスチナ情勢は、アラブ全体を混乱に陥れる可能性を秘めた大問題だ。

それゆえハマスによる攻撃が行われた際に、他のアラブの産油国にも影響を及ぼすのではとの懸念から、原油先物に買いが集まったのも当然と言えよう。

確かに、その後は周辺国が比較的抑制的な態度を取ったこともあって混乱が拡大せず、石油供給にも今のところは大きな問題が生じていない。そのため、前出のように石油市場全体需給の弱さのほうがより大きく材料視され、軟調な相場展開が続いている。しかし、やはりフーシ派による紅海で船舶への無差別攻撃はなお続いており、流れが変わる可能性は決して低くない。

イランの動向が、大きなカギを握る

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