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生活に不安で「文学の研究を断念」揺れる院生の心 就職できるポストも少なく、道のりは険しい

東洋経済オンライン / 2024年2月9日 11時40分

「できるだけいい会社に就職したいから進学したと話す学生もいれば、違う大学に行きたかったけれども、合格しなかったのでこの大学に入ったという学生もいます。多くの人が就職先や大学名を考えて進学している感じですね。

就職先や大学名はもちろん大事だと思います。その一方で、私自身は大学で学びたいことを考えて、進学先を決めるのがいいのではないかなと思っています。大学での学びや、大学院での専門的な研究を通して、自分のアイデンティティや支えになるものを見つけることで、結果的に充実した時間を過ごすことができます」

山口さんは博士前期課程を卒業後、大学生協への就職が決まっている。学生や教授を支える仕事をしたいと思った理由から志望した。

一方で、博士後期課程への進学や、大学院での学びを直接的に生かせる仕事に進みたいという思いもあったが、「非常に険しい道」だと感じて断念していた。

「博士後期課程への進学に興味を持っていました。しかし、卒業後に教授を目指すといっても、研究者として就職できるポストも少なく、文学部自体も減ってきています。

教授自身も、今は博士号を取ったとしても、大学に就職できるまで何年かかるのかわからないと話していました。かなり険しい道で、興味があるくらいでは進めない道だと思い尻込みをしました。

また、博士前期課程を卒業した後の就職では、専門性を生かせる点で博物館の学芸員も選択肢として考えて、実際に資格も取得しました。けれども、採用がほとんどなく、あったとしても給与は家賃を払うとほとんど残らないような待遇でした。お金を稼ぎたいから働きたいというわけではないですが、専門性があっても生活できないような仕事しかないことに、高い壁を感じました」

学費の負担も進学を諦める要因に

もちろん、大学院で学ぶうえでは学費も必要になる。山口さんは実家から通っていて、給付型の奨学金を受給することで、学費の半分ほどを賄うことができた。そのうえで就職した1年間の貯金を切り崩している。しかし、それでも足りずにアルバイトもしてきた。学費をはじめとする負担も、博士後期課程への進学を諦めた要因の1つだった。

「やはり1年間の蓄えだけでは足りませんし、博士後期課程に進学するのは難しいです。アルバイトをしようと思っても、学会を控えた時期などは忙しくてできません。なかなか思うようにはいかないのが現実です」

前述の学校基本調査によると、2023年3月に博士前期課程を修了した7万4258人の進路状況は、就職した人が5万7483人。全体に占める割合は77.4%で、前年度よりも1.3ポイント上昇した。

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