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食べログ逆転勝訴の決め手「別ロジック」の波紋 独禁法の「精鋭弁護士」は戦い方をどう変えた?

東洋経済オンライン / 2024年2月9日 7時40分

加えて高裁は「(原告の焼き肉店と)評点が下落しなかった飲食店と比較して、どの程度来店人数等が減少しているのかは明らかでない」「飲食店市場における競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼすとまでは認めがたく、その影響は限定的」などとし、不当と断じられるほど不利益が大きいとはいえない、と焼き肉店側の主張を退けた。

焼き肉店にとっては残酷な結果となった高裁判決。結論だけを見れば、地裁と高裁の判断は対立しているように見えるが、そうでもない。1審から食べログ側は「飲食店側は競合のグルメサイトなどの広告費を増やすことで対応できる」などと「優越的地位の濫用」の要件すべてを否定していた。

その点に関しては、地裁も高裁も意見は一致しており、食べログ側は飲食店に対して優越的な地位にあること、今回のアルゴリズム変更はその地位を利用して行ったこと、その結果、焼き肉店に不利益を与えたことを認定している。これはプラットフォーマービジネスとその利用者との関係をうらなううえでも、一連の訴訟の大きな意義といえるだろう。

独禁法における「不当」の差

この「食べログは優越的地位を利用してアルゴリズムを変更。その結果、弱い立場にいる焼き肉店の客数減、損失という不利益を生じさせた」という2つの裁判所の共通認識を踏まえると、食べログ側の行為は不当に見える。だが、弁護士で慶応義塾大学の田村次郎教授は「そこは冷静に考える必要がある」と指摘する。

アメリカの司法省や同国独禁当局である連邦取引委員会でのキャリアもある、独禁法専門家の田村教授によると、「一般的な『不当』と独禁法上の『不当』には大きな差があり、今回の事件に対する高裁の判断はその間ということ。焼き肉店側は自身の受けた不利益が、独禁法違反といえるレベルまでは立証しきれていない」と続ける。

さらに「いち個人が食べログという巨大なプラットフォーマーを独禁法違反に認定するためには、そのエビデンスさえもプラットフォーマーに出してもらう必要がある。違反を立証することは極めて難しい」(田村教授)と語る。

今回の判決が改めて示したのは、プラットフォーマーとその利用者との間にある「情報の非対称性」だ。

地裁判決後もしばらく非公開だった1審判決文を改めて精査すると、地裁は焼き肉店側が受けた不利益を「食べログ経由の来店人数等が減少していること」をもって「程度は大きい」と判定している。これだと独禁法が重要視する「合理的な範囲を超えた」かの検証は不十分ともいえ、「高裁で判決が覆ったのは独禁法上の解釈としては妥当」(田村教授)と捉えることもできる。

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