日本酒「"添加物"で伝統的造り方が減少」は問題か 「速醸」が発明されて…「簡略化の功罪」を考える
東洋経済オンライン / 2024年2月11日 12時0分
「生酛造り」「山廃仕込み」は現在もいくつかの酒蔵で造られていますが、今となっては貴重な存在です。これらはちゃんとラベルに銘打って売られているので、飲んでみたい人は探してみてください。
同じ明治時代に、「速醸(そくじょう)」という製法が発明されました。
これは、「酛(もと)」を造る段階で、人工的に作られた「乳酸」を添加する方法です。「添加物の乳酸」が液体で売られているのです。
これを直接添加すれば、「山卸(やまおろ)し」も「山廃(やまはい)」も不要で、「酛」ができます。この「酛」を「速醸酛」といいます。
この速醸によって、酛造りの期間を3分の1に短縮できるようになりました。
現在、日本で造られているお酒の9割以上が、この「速醸酛方式」です。
「山卸し・山廃」方式では酛造りに2~3週間かかるところ、この「速醸酛方式」だと2~5日程度で完成します。
これによってコストも下げられ、通年製造することが可能になりました。
昭和に入って、さらに「簡略化する方法」が考案された
その後、昭和に入ると、さらに工程を簡略化する方法が考案されました。
先ほど「①麹造り」で、麹がでんぷんを糖に変えると述べました。
それなら蒸した米に「アミラーゼ」といった酵素を添加してしまえば、でんぷんが早く糖に変わり、麹も少なくて済みます。このとき、温度を上げると酵素がより働くから、温度を55度ぐらいまで上げます。
ここに乳酸を添加すれば、より早く酛が出来上がるわけです。これは「高温糖化酛」と呼ばれます。
さらに簡略化が進みます。
米を蒸す過程を省略して、生米をすりつぶして粉末化したものに水を入れて「米粉水」を作るのです。これを80度の高温にして酵素を入れると、すり潰された米が全部、オリゴ糖やブドウ糖などの糖に変わります。
これを「液化仕込み」あるいは「融米(ゆうまい)仕込み」と呼びます。
本来なら、酛(もと)を造るのに2週間もかかるのが、この「液化仕込み」なら、ほんの短時間でできるのです。
先にちょっと触れましたが、昔から日本酒は「寒造り」といって極寒の中で造られてきました。寒い時期が、最も雑菌が繁殖しづらいからです。
しかし、この方法なら、コンピューターで温度管理をするから、寒造りなどは必要ありません。季節を問わず大量生産が可能です。
「生酛造り・山廃仕込み」「速醸」どちらがおいしい?
では、この「生酛造り・山廃仕込み」と「速醸」はどちらがおいしいのでしょうか。
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