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日本酒「"添加物"で伝統的造り方が減少」は問題か 「速醸」が発明されて…「簡略化の功罪」を考える

東洋経済オンライン / 2024年2月11日 12時0分

私の個人的な感想ですが「生酛造り・山廃仕込み」は「速醸」よりおいしく感じます。伝統的な生酛の力でじっくり発酵させることで、「複雑なうま味」が醸し出されるから、酒に力があります。

「生酛造り・山廃仕込み」は酸度・アミノ酸度が高く、うま味が強いのに対し、「速醸」は酸度・アミノ酸度ともに低く感じます。

ただし、酒はあくまで嗜好品です。

「速醸」「液化仕込み」は「淡麗」という言い方をされ、このほうがおいしいという人もいるわけです。爆発的人気となったブランド酒も「速醸方式」です。

「速醸」「高温糖化」が広がったことで、安定的に日本酒が生産され、価格が安くなったことは間違いのないことです。

しかし、昔ながらの「生酛造り」「山廃仕込み」こそが本来の酒であり、これが「『添加物(乳酸)を使う速醸』によって壊された」と嘆く日本酒ファンも少なくありません。

酒屋も「生酛造り」「山廃仕込み」がどんどん減っていくことを憂いています。私もそこは残念に思います。室町・江戸時代から連綿と続く日本の伝統文化ですから、残ってほしいという気持ちはあります。

日本酒にも「添加物の功罪」がある

しかし、この「乳酸の添加」によって速醸酛を造ることで、大変な重労働から解放され、日本酒が安定生産できるようになったことは間違いありません。

私は『食品の裏側』を発売以降、一貫して「加工食品の裏側」を明かすことで、「添加物の功罪(メリット・デメリット)」を消費者のみなさんに伝えてきました。

添加物の「罪(デメリット)」を避けたい人、「何を食べたらいいか」迷う人のために、15年かけて、「無添加」でも簡単においしい食事が作れる「魔法の調味料」を開発し、レシピ集『安部ごはん』としてまとめました。

ただ、添加物には「安い・簡単・便利」などのメリットがあるのも事実で、こと「添加物の功罪」という視点でいえば、日本酒に関しては「功」のほうが大きいとも私は考えています。

とはいえ、簡略しすぎもいかがなものでしょう。

生米をすり潰して、「乳酸」「アミラーゼ」などの添加物を駆使して造った酒が高く売れているというのは、なんだかおかしな現象のように私には思えてなりません。

いずれにしてもみなさん、ブームや目新しさにとらわれず、ご自分の舌で「本当においしい酒」を選んでいただきたいと思います。

安部 司:『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事

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