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運転歴30年タクシー運転手の脳が成長した理屈 「加齢=記憶力の低下」は脳科学的には間違い

東洋経済オンライン / 2024年2月12日 16時30分

実は「加齢=記憶力の低下」とすぐに結びつけるのは、脳科学的には間違いだということがわかってきました(写真:Graphs/PIXTA)

「最近、物忘れがひどい」「人の名前が出てこない」「あれ、それ、あの人、といった指示代名詞が多くなった」といった症状を自覚する人はいませんか?

「これって歳のせい?」「もう記憶力を高めることはできないの?」と諦めている人もいるかもしれません。ですが、楽をして記憶に残すことは可能です。脳の仕組みを研究した精神科医の樺沢紫苑さんが、「記憶」と「学び」について20年以上の試行錯誤をわかりやすくノウハウとしてまとめた『記憶脳』から一部抜粋、再構成してお届けします。

脳の衰えや認知症を防ぐ

最近、人の名前がパッと出てこない。今、何をとりに来たのか、忘れてしまった。先日読んだ本のタイトルが、パッと思い出せない。重要な約束をうっかり忘れていた……。

こんな「物忘れ」の症状が現れると、「ひょっとして、自分は認知症になるんじゃないか」、あるいは「もう認知症が始まっているんじゃないか」と不安になる人もいるでしょう。

ほとんどの人は「記憶力の衰えを防ぎたい」と強く願っている一方、「歳をとると記憶力が衰えるのはしようがない」とあきらめているのではないでしょうか。そして、衰えていく記憶力に対して、何も対策を講じていない人がほとんどだと思います。

脳をあまり使わないでいると、働きは低下し、記憶力は衰えていきます。あるいは脳細胞もドンドン死んで、脳が小さく縮んでいきます。これを「廃用性萎縮」といいます。

高齢者の脳をMRIという断層写真で見ると萎縮していることが多いですし、加齢とともに脳は毎年少しずつ萎縮していきます。

こう聞くと、多くの人は「やはり歳をとると記憶力は低下するんじゃないか」と感じるでしょう。しかし実は、「加齢=記憶力の低下」とすぐに結びつけるのは、脳科学的には間違いだということがわかってきました。

「生まれてから脳細胞は減り続ける」「毎日、10万個の脳細胞が減り続けて、脳細胞が増えることはない」という話を聞いたことがある人も多いでしょう。私が医学生の頃には、「脳細胞は増殖も再生もしない」と習いました。

しかしこの話は、最近の脳科学研究では間違いだったとわかっています。

イギリスのロンドン大学のマグワイア教授が、ロンドン市内のタクシー運転手16人の脳を調べたところ、一般の人と比べて「海馬」の体積が大きく、タクシー運転手の経験が長いほどその体積は増加することが明らかにされました。運転歴30年のベテランドライバーの場合、一般の人と比べて、海馬の体積が3%も大きいという結果が出たのです。体積で3%の増加は、神経細胞の数でいうと20%も増えたということです。

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