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静岡リニア、相次ぐ「新局面」はJR東海に朗報か 県は47項目を整理、国は新組織を立ち上げ

東洋経済オンライン / 2024年2月12日 6時30分

森副知事が今回発表したのは47項目に関する県の見解である。全項目の議論が終わったとする国とは異なり、県の専門部会では疑問点が解消され、合意が得られたのは17項目にとどまり、残る30項目については引き続き協議が必要だという。国の認識とは大きな隔たりがある。

それはさておき、47項目の内訳について見てみると、トンネル湧水の全量戻しに関する内容など水資源に関する項目は26あり、そのうち17項目が終了。南アルプスの環境保全は17項目で森副知事は「議論が進み、一定の進捗は見られた」と言うものの、終了した項目は0だ。トンネル発生土の置き場は4項目で終了した項目は同じく0となっている。

水資源については、トンネル掘削による大井川中下流域の地下水の影響は、河川流量の季節変動や年ごとの変動による影響と比べれば極めて小さいという報告が国の有識者会議から出されている。中下流域の利水者への影響はほとんどないとしている。それでも県は「トンネル湧水の全量戻し」を求めているため、JR東海は「田代ダム取水抑制案」を示し、ダムを管理する東京電力リニューアブルパワーと実施に向けて合意している。この状況を踏まえ、県はどのように取水抑制を進めるかという具体的な運用方法や、取水抑制できない状態が続いた場合の対応、突発湧水など不測の事態が発生したときの対応などで引き続きJR東海と対話が必要とする。

もっとも、実際のところ県はJR東海に昨年11月29日付で実施案を了解するという文書を送付している。つまり県はすでに了解しているのだ。従って、「引き続き対話が必要」といっても前提がくつがえるなどよほどのことがない限り時間がかかることはないはずだ。

環境保全と発生土に関する21項目については、対話が終了したものが1つもないとしており、国の有識者会議の報告書と真っ向から対立している。その理由を県に問うと、端的に言えば事前調査に関する見解の相違だ。

工事の実施前に調査を行い、工事がもたらす生物への影響の予測・評価を行い、それに基づき、計画を立案、実行、モニタリング、さらに必要に応じて計画を見直す。このPDCAサイクルのプロセスを県と国は「順応的管理」と呼び、その基本的な考え方は両者とも同じ。違いは事前調査をどこまでするかという点に尽きる。

国の有識者会議の中村座長は「何年かけてもパーフェクトなものはできない。不確実性の中で決めていかなくてはいけない」と述べるが、県の石川英寛政策推進担当部長は、「調査が足りないまま工事を始めたときに、取り返しのつかない結果が出ることを危惧している」。そのいっぽうで、「100%を目指し、何年もかけてやれというつもりはない」とも述べた。

専門部会での議論はいつまで続くのか

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