「囚われた人々」奪還へ突き動かすイスラエルの教え どんな大きな代償を払っても人命を救う理由
東洋経済オンライン / 2024年2月13日 20時0分
イスラエルがジェノサイド(大量殺戮)を行っているとして、南アフリカがICJ(国際司法裁判所)に提訴したが、まったくの詭弁だ。「ジェノサイド」という言葉は、ナチスによるユダヤ人大量虐殺を形容する言葉としてイギリスの法学者が作ったものである。それをイスラエルにあてがうとは、悪い冗談かと思ったほどだ。
多くのガザ市民が犠牲になっているのは不幸としか言いようがない。けれども、ガザの一般市民が犠牲になっている責任は、民間人に隠れて(あるいは民間人になりすまして)攻撃を行っているハマス側にある。
これは明確な国際法違反である。国家ではないハマスに国際戦時法が適用されることがないのをいいことに、ハマスはやりたい放題やっている。
イスラエルはこのような敵と対峙し、ガザ市民を保護しつつ人質を奪還するための困難な作戦を遂行している。断罪すべきは、2023年10月7日に無辜の市民を大量に虐殺したうえに人質を取った卑劣なテロ組織に対してである。
テロリストとの交渉には応じないというのがイスラエルの鉄則だ。それでもなお、2023年11月には人質解放の取引に応じ、ハマスに監禁されているイスラエル人質1人に対して、イスラエルに収監されているパレスチナ治安囚人3人を釈放する提案を受け入れた。
人質1人対囚人1000人の取引も
かつて、IDF兵士のギルアド・シャリート伍長がハマスに拉致されるという事件があった。長い交渉の結果、5年後の2011年にパレスチナ囚人1000人の釈放と引き換えに、シャリートは生還した。1対1000の取引だった(ちなみに、このときに釈放されたパレスチナ囚人の中に、今回の10月7日の実行犯が含まれていたことが判明している)。
無謀とも思えるこうした取引の背景には、「ピドゥヨン・シュブイーム」(囚われた人々の贖い)と呼ばれるユダヤ教の教えがある。他民族に囚われた同胞を助けるためには、どれだけ大きな代償を払うことになっても最大限の努力をするべきとする戒律である。
これは聖書に明記された律法ではない。紀元70年に国を滅ぼされて以降、約2000年もの間、自らの国を持たずに各地域に離散して生き続け、流浪を余儀なくされたユダヤ民族があらゆる時代・場所で直面した問題から生まれた思想である。
613もの戒律があり「融通の利かない非人間的な宗教」と思われがちなユダヤ教だが、その根底には人命を最優先するという思想がある。
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