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教育水準「上がりすぎ」先進国を襲う悩ましい問題 教育は幸福につながる?知られざる負の側面

東洋経済オンライン / 2024年2月14日 16時0分

教育は繁栄をもたらすが、教育過剰には負の側面もある(写真:Graphs/PIXTA)

長らく教育は幸福につながると考えられてきました。実際に発展途上国では識字率の上昇とともに平均寿命が延長し、個人の単位でも教育によって未来の選択肢は増えます。しかし一方で、教育には負の側面もあると人口学者のポール・モーランド氏は指摘します。本稿では、教育が十分すぎるほど普及した先進国で生じている弊害について解説します。

※本稿はポール・モーランド氏の新著『人口は未来を語る』から一部抜粋・再構成したものです。

教育は幸福につながるか

教育の価値については、基本的には異論の余地がない。教育は個人の視野を広げるためにも、経済を発展させたり人口転換を進めたりする手段としても、明らかに望ましいものである。また教育の向上は平均寿命の延長とも無関係ではない。

発展途上国では、読み書きができれば自分と家族の健康をよりよく管理できるようになるため、教育の向上によって平均寿命が延びる。先進国では、学士号取得者のほうがそうでない人よりも死亡率が低いという事実がすでに明らかになっている。さらに、教育は民主主義が育ちうる状況を作り出すとも考えられる。

そのような状況は、人はたくさんいるが命がぞんざいに扱われ、ほとんどの人が政治プロセスに参加しない体制よりも好ましいはずである。また教育は開発を促進する。ある意味では教育そのものが開発である。1人あたりGDP、平均寿命とともに、教育は、国連が人々の幸福を測る指標である「人間開発指数」を算出するのに用いている3つの指数のひとつに入っている。

教育に懐疑的な人々は、教育が繁栄をもたらすのではなく、その逆ではないかと指摘する。教育によって人が豊かになるというより、豊かで余裕のある人が教育を受けているだけではないかと。それは違うと思われるが、ただしすべての教育がよいもので、金額に見合った価値がある(負担しているのが国か個人かは別として)とは言えない。

また、たとえ教育が行われていても、必ずしも市場の要求を満たすわけではない。少し前に述べたように、中東では教育が就職や収入に結びついておらず、中国南西部の農村地帯でも同じ問題が見られる。この地域の少数民族には義務教育を受ける権利があるのだが、研究者によると、こんな山村ではたとえ大学を出ても仕事などないと言って子供を学校に行かせず、野菜を売りにいかせる親がいるという。

ある父親などは、学校を出て運よく工場で働けることになったとしても、それでは怠け癖がついて農作業に耐えられなくなるから困ると言ったそうだ。この父親が状況を正確に把握できているのかどうかは別として、環境がまったく整っていなかったり、教育後に何の機会も与えられないとしたら、教育が有益だとは言えなくなってしまう。

教育は未来の世代の希望

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