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教育水準「上がりすぎ」先進国を襲う悩ましい問題 教育は幸福につながる?知られざる負の側面

東洋経済オンライン / 2024年2月14日 16時0分

一方で、教育への渇望は多くの人々を行動に駆り立てる力を持っていて、教育のためなら犠牲を払ってでも行動しようと思う人が少なくない。アメリカにやってきた移民の最初の数世代は、自分たちが得られなかった教育の機会を子供たちに与えるために身を粉にして働いた。彼らは教育を社会に立て掛けられたはしごと見て、自分たちは登れなかったが、将来世代は登れるようにしようと力を尽くしたのだ。

これはアメリカだけのことではないし、移民に限ったことでもない。世界のどこであっても、子供たちは受けうる最高の教育を求めて学校に行っていて、なかには裸足の子供、空腹を我慢している子供もたくさんいる。マラウイで学校に通うナイレンダはこう言う。

「朝は食べないけどそんなのは平気なんだ。だっていつか実業家になれるって信じてるし、そうしたらたくさん食べれるようになるから」

教育に対するもうひとつの否定的な見方は、教育とは人間を近代の産業資本主義の生産単位にするためのものだという考えだ。SF作家で未来学者だったアルビン・トフラーは、「大衆教育は、産業主義が必要とする大人を生産するための精巧な機械だった。それには組織化、個別性の欠如が効果的な手段とされた」と述べた。

このような批判は工業化時代から脱工業化時代に移行してもなお教育につきまとい、今では次のように表現されている。単純作業化が進み、人はオートマタ(自動人形)として仕込まれ、いずれ技術の進歩によって不要になるまでその仕事が続くのだと。

成果主義のプレッシャー

また、教育が持つ、達成しなければならない、順応しなければならないという側面は精神的プレッシャーの一因になり、誰もが耐えられるわけではない。韓国を見るとそれがよくわかる。韓国は教育を大きなバネとして、以前には考えられなかったほどの繁栄を遂げたが、成果主義の教育制度はこの国の若者たちを大きな不安に陥れた。

誰もが一流大学を目指すことを求められ、競争率の高い入学試験を突破しようと必死になるからだ。ストレスを感じている生徒は86パーセントに上り、休みを取ると罪悪感を覚えるという生徒が75パーセント近くいて、夜は11時まで勉強するのが普通だという。

ある生徒は、「友達がどうしているのか気になっちゃうんです。それで、友達ががんばっているのに自分がやってないとうしろめたくなって、もっと勉強しなくちゃと思うんです」と言っている。韓国の自殺率はOECD加盟国のなかでもっとも高く、10代の自殺率は世界でもっとも高い。

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