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「1社だけ異質な計画」サントリーがジン強化の訳 レモンサワー的な位置付けを狙っていけるか

東洋経済オンライン / 2024年2月14日 13時10分

その後、リニューアルを重ねながら着実にマーケットに浸透してきており、大阪工場への投資も満を持してアクセルをグッと踏む段階に来たということを表していると考えるのが妥当でしょう。

コロナ禍以降の家飲み需要増加を受けて、世界的にも蒸留酒の売り上げは拡大傾向にあります。こうした中、サントリーは国内ではハイボールを定着させ、高級品についても高い支持を得ています。蒸留所を閉鎖してウイスキー事業を縮小しているキリンとは対照的で、今後蒸留酒やRTD分野においてますます攻勢をかけていくことが予想されます。

昨年12月にリニューアルした「翠ジンソーダ」の缶を先日購入し試してみました。ジンの特徴であるジュニパーベリーの香りが弱めで、その代わりに柚子由来の爽やかな香りが強く感じられました。全体の印象としてまったく甘くないZIMAなどを想起させ、ジンのソーダ割りでありながらその姿はチューハイに近いものとなっています。

若い人の間で人気の平野紫耀さんを起用したCMで描かれているように、居酒屋をはじめとするカジュアルな業態で食中酒として楽しんでもらおうという意図を強く感じます。バー業態を念頭に置いているであろうプレミアムなクラフトジンであるROKUと明らかな違いです。

翠ジンソーダはジンをベースにしているという点を強調してレモンサワーに代表される既存のチューハイではないことを示しているように見受けられますが、事実上チューハイジャンルに新フレーバーを持ち込んで勝負に出たということなのだと筆者は解釈しています。焼酎やウォッカではなく、ジンでレモンサワーに近いものを実現したと言い換えることができるかもしれません。

筆者が以前、指摘した(サントリー「一線を超えたビール」が意味すること)ビアボール同様、新しい分野に挑戦する「やってみなはれ」の精神がうかがえます。すっきりした、強すぎない穏やかな味わいでシチュエーションを選ばない新しいオルタナティブとして若い層を中心に人気が出るのではないでしょうか。

海外ではジンのソーダ割りはマイナー

一方、海外展開はどうでしょうか。前述の通り、ビームサントリーとして海外に展開していますから、世界的なジンの人気を背景にサントリーがこれらのジンをどこまで海外で展開できるかは気になるところです。率直なところ、筆者は翠に関してはこのままだと難しいと考えています。

海外だとジンはバーで親しまれており、人気なのはジントニックで、ソーダ割りの商品はかなりマイナーです。ソーダ割りにする場合は、ジンとソーダだけのプレーンなものではなく、果物を合わせるなどフレーバーを足して仕上げるものが多く、現状のままでは海外展開は難しいと思われます。

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