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アップルの「Vision Pro」発売は"時期尚早"なのか 未成熟、利益貢献は先でも今投入すべき理由

東洋経済オンライン / 2024年2月15日 7時0分

しかしアップルの成長戦略を考えるならば、腰を据えて長期的な投資を行うことは正しい判断になるだろう。空間コンピュータというジャンルが有望であることを開発者たちに知ってもらい、新しい価値を共創する環境を整えるには、かつてのスマートフォン以上に多くの時間が必要だと思うからだ。

純粋な情報ツールとして未成熟ということは、ほかならぬアップルが自覚していることだ。利益貢献するまでの道のりが厳しいことも同様だろう。

アメリカのエンターテインメント誌『バニティフェア』のインタビューでティム・クックCEOは、6〜8年前に初めてその構想段階の試作品を体験したとき、将来、アップルの製品ラインナップに組み込むべきものだと直感したと話している。

それはまだ現在の本社ビルがオープンする前、旧本社ビルの一角でのこと。当時は、その製品を世の中に投入するまでの道のりは予想できなかったが、「いずれ完成する」と確信を持って開発が続けられたという。

クックCEOが感じた新しい可能性。それは優れた技術に基づいた、ライフスタイルを変える可能性を持つ製品を作るだけではゴールとはいえない。市場が未形成のパーソナルコンピュータは、開発者やクリエイターが、新しい開発基盤で自身のアイデアを実現するためのコミュニティを醸成する必要がある。

ではそのためにアップルは何をすべきなのか。手のひらに載せ、誰もがその体験を共有できたiPhoneのときとは訳が違う。Apple Vision Proは1台ずつ、1人ひとりが個別に体感してその価値を理解する、情報の伝搬が遅いジャンルの製品だ。

アップルが時期尚早とも受け取れるこの時期から、Apple Vision Proを世の中に投入し、テクノロジーの世界に興味を持つ開発者、クリエイター、そしてわれわれのようなジャーナリスト、テクノロジー業界に身を置くあらゆる人たちを通じて、「空間コンピュータとはどのようなものか」を可視化することにした。

それこそが第1世代Apple Vision Proの役割、というのが筆者の理解だ。

未形成の市場に開発者を呼び込めるか

Straits Researchのレポートによると、スマートフォンアプリ市場は年間2000億ドル規模を突破し、今後も年間12.8%のペースで成長するという。この数字をどこまで信頼するかはともかく、スマートフォンアプリ市場と比べれば、今のところ“ほぼゼロ”の空間コンピュータ向けアプリ市場は、開発者にとって魅力的な領域とは言えない。

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