能登半島地震、防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因
東洋経済オンライン / 2024年2月15日 7時50分
2024年元日を襲った能登半島地震では200人を上回る人命が失われるなど、深刻な被害が発生した。阪神淡路大震災をはじめとして多くの自然災害に向き合い、防災対策の見直しを提唱してきた室﨑益輝・神戸大学名誉教授は「反省すべき点が多くある」と指摘する。
――今回の災害の大きさや深刻度についてどのようにとらえておられますか。
とんでもない地震が起きたというか、想像を絶する地震が起きた。家屋の損壊状況もすさまじいものだし、道路という道路が破壊されました。そういった被災状況だっただけに、過去がこうだったから今回こうだとは言えない部分はあります。ただ、救いを求めている被災者がたくさんいる現実にどう応えていくか。行政のみならず、私たち一人ひとりを含む社会全体の責任だと思っています。
すぐに救援に駆けつけられなかった
――能登半島地震の発生から1カ月余りが経過しました。これまでを振り返って、どのような教訓や反省点がありますか。
震災の教訓を引き出すには、失敗体験をしっかり踏まえなければならない。今回の地震では、助けを求めている被災者のところに救援隊がすぐに駆けつけることができなかった。これが大きな反省点だったと思います。
その根源をたどると、大きく2つの誤ちがあったと言えます。
1つ目の過ちは事前の被害想定の甘さです。
能登地方でこれほど大きな地震は起きるはずがないという思い込みも含めてのことですが、国、石川県ともきわめて小さな地震しか想定していなかった。その結果として、事前の準備がきちんとできていなかった。
孤立集落があちこちで発生する事態を見越していれば、備蓄対策のあり方も違っていたし、平時の情報通信が途絶しても連絡を取れる衛星携帯電話を配備するといった事前準備もやっていたはずです。
2つ目の過ちは、地震発生直後に被災状況の把握がスムーズにできなかったことが、初動対応の遅れにつながったという点です。
政府は当初、災害対策基本法に基づく態勢としては最も下のクラスの「特定災害対策本部」の設置にとどめた。これを「非常災害対策本部」に格上げし、同本部の会議を初めて開催したのは翌1月2日の午前9時過ぎのことでした。
初動態勢の構築が遅れた結果、自衛隊投入の規模も当初の1000人規模から小出しになってしまった。
――石川県の地域防災計画(地震災害対策編)では、「能登半島北方沖」を震源とする地震としてはマグニチュード7.0を想定し、被害の概況についても「死者数7人、建物全壊120棟」「ごく局地的な災害で、災害度は低い」とされていました。四半世紀にわたってその想定は見直しがなされていませんでした。石川県の災害危機管理アドバイザーを務め、県防災会議震災対策部会長でもある室﨑さんは、2023年2月の同部会で、地震被害想定の抜本的な見直しを決定したという発言をしています。
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