ドラマ「不適切にも~」昭和世代の部長が沼る理由 平成世代の「働き方」と「働きがい」の狭間で
東洋経済オンライン / 2024年2月16日 12時0分
昨年は「シン・宮藤官九郎」元年だったと思う。「弱者の物語」を描く脚本家としての「第2章」へ。
昨年、放送(配信)された注目すべき2つの宮藤官九郎作品。1つは昨年1月3日にNHK総合で放送された『いちげき』。幕末期、乱暴狼藉を働く薩摩藩士らに対抗するため、農民を集めて結成された「一撃必殺隊」の活躍を描く物語(以下、NHK公式サイトの説明より)。
――舞台は大政奉還直後の江戸。徳川滅亡を図り江戸城下でろうぜきの限りを尽くす薩摩藩士に対し、大規模な戦争を避けたい勝海舟は会津藩の武士でも庄内藩の武士でもなく「村の力自慢」や「大男」、「村一番の速足」や「機転の利く小男」などバラエティーに富んだ百姓たちを寄せ集め、私設部隊を秘密裏に立ち上げる。
次に、昨年ディズニープラスで配信された『季節のない街』。これこそが「シン・宮藤官九郎」の象徴であり、ある意味で現時点での彼の最高傑作と言えるだろう。
黒澤明映画『どですかでん』(1970年)の原作となった山本周五郎の小説を宮藤官九郎がアレンジ。(明らかに東日本大震災後を思わせる)「仮設住宅」を舞台に、めっぽう個性的な弱者たちがワチャワチャする物語。ディズニープラス『季節のない街』公式サイトで宮藤本人はこう語る。
――どうしよう。今回は自信がある。紛れもなく、いちばんやりたかった作品で、これを世に出したら、自分の第二章が始まるような気がしています。
「平成世代」(30代)の物語
では、賑やかな『不適切にもほどがある!』のどこに弱者視点があるのか。ここでは、今どきの会社における「働き方改革」をテーマとした第1話・第2話に注目する。私はこの2回をそれぞれ秋津真彦(磯村勇斗)、犬島渚(仲里依紗)の物語として見た。
秋津真彦はアプリ開発会社の社員で入社7年目。まったく悪気はないにもかかわらず、部下の女性からハラスメントで訴えられる。犬島渚は、1歳6カ月の息子がいるシングルマザーで、テレビ局のバラエティー番組を担当アシスタントプロデューサー。仕事中も育児に追われながら、使えない若手社員に手を焼く。
いくぶん乱暴と思いつつ世代論でくくると、これは「昭和世代」と「Z世代」の中間で板挟みになっている、ある意味でもっとも根深い問題を抱えた弱者=「平成世代」(30代)の物語だ。
バブル経済が崩れていく平成初期に青春を過ごし、リーマンショック/東日本大震災前後に、狹い門をくぐり抜けて社会人になり、さぁ、ようやっとこれから脂の乗り切った会社員になるタイミングで、コンプライアンスと「働き方改革」のがんじがらめになっている世代。
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