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民営化の布石?台湾鉄道「国営企業化」の大改革 蔡政権「最後の実績」、組織は変わるが実態同じ?

東洋経済オンライン / 2024年2月17日 6時30分

台湾鉄路の特急「プユマ号」(筆者撮影)

台湾の総統選に先立つ2024年1月1日、これまで在来線を管轄していた政府機関、交通部台湾鉄路管理局(台鉄)が国営企業化され、国営台湾鉄路股份有限公司(国営台湾鉄路株式会社)として新たなスタートを切った。

【写真を見る】国営企業化により80年近い歴史に幕を下ろした「交通部台湾鉄路管理局」。企業化によりこれまでの駅弁やグッズ販売以外の副業展開も探る

これまでの台湾鉄路管理局は、政府の交通部(日本の国土交通省に相当)が管理する鉄道施設を運営する組織という位置づけだったが、これが政府出資の株式会社に変わったことになる。

新体制発足にあたり、台鉄改革に取り組んできた蔡英文総統(当時)は「政府は組織文化の改善、経営基盤の改善を後押しすることで、自主的な運営を促進するとともに補助金の支給と、資産開発を通じ財政の健全化をサポートしていく。台鉄が公共利益を生み続ける企業体として、より安全かつよりよいサービスを提供できる、持続可能な経営が行われていくことを期待する」と語った。

台鉄の国営企業化の議論は2000年代前半から活発化し、停滞期間を経て約20年かけてやっと達成された悲願の政策だ。どのような背景があり、なぜこのタイミングで実現したのだろうか。

危機感はあったが動かなかった政府

1980年代以降、台湾の東西を結ぶ高速道路の整備で、在来線を管理していた旧組織である台湾鉄路管理局の財政は悪化の一途をたどっていった。1998年には累積損失が100億元(約479億円)を突破。これを受けて民営化の議論が動き出した。

改革案では当初、イギリスの鉄道を参考に所有と経営を分けた上下分離方式が示されたものの、責任の所在などの問題から、まず国営企業化を実施して経営体質を改善したうえで、将来的には資産すべてを自社保有する民営化を目指す方向に改められた。この枠組み自体は今回の企業化でも引き継がれている。

しかし、この改革案は鉄路公会(労働組合)の大きな反対を受けた。2003年2月、国営企業化や将来的な民営化後の雇用に疑念を抱いた台鉄の従業員約2000人が台北駅で陳情を行ったのだ。さらに、開業を控えた台湾高速鉄道の台北駅乗り入れのために在来線の線路やホームの一部を高速鉄道に引き渡すことを決めていた政府への反感も強く、それらの声も重なって民営化の期限は白紙状態となった。

その後も民営化への反対は強く、2004年春節期間のストライキなどを受け、鉄道改革は組織内の改革を中心とした消極的なものとなり、その後2回の政権交代がありながらも、議論は置き去りとなっていた。

相次ぐ事故で改革が課題に

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