「魔女の血」の異名を持つイタリア発ワインの秘密 生産者が語る「ヴィーショラワイン」の味わい
東洋経済オンライン / 2024年2月18日 12時20分
豊かなワイン文化を持つイタリアには、ブドウではなくサクランボから造られる甘いワインも存在する。
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その存在を知る人は少ない
イタリアでも知る人が少ないというサクランボが原料のヴィーショラワインとは、どのようなものか。世界100カ国以上の現地在住日本人ライターたちの集まり「海外書き人クラブ」会員である筆者が、マルケ州に古くから伝わるサクランボワインの生産者に話を聞いた。
イタリアの中部に位置するマルケ州。イタリア半島をブーツに例えると、ちょうどふくらはぎにあたる州だ。
フィレンツェやミラノなどの有名都市に比べ知名度は低いが、古くから港湾都市として栄えた州都アンコーナや、ルネサンス美術の巨匠ラファエロを生んだ芸術の街ウルビーノなど、観光名所も多い。
美食の面では、豊かなアドリア海とアペニン山脈を有すことで海と山の幸に恵まれ、広大な丘陵地帯では古代ローマ時代からワインが造られていた。
「ヴィーショラは地中に広く根を張る強い木です。マルケ州の丘陵地は地盤がもろいため、古くから家の周囲にこの木を植えることで、地盤を安定させてきたのです」
地元でヴィーショラワインを生産しているカルディナーレ家のルーカさん(57)が言う。
ヴィーショラの木は春になると一斉に桜の花を咲かせて人々を魅了する。桜を愛する文化を持つ日本人とマルケ人とは、きっと通じ合えるものがあると思う、とルーカさん。
家庭料理の延長だったワイン
ヴィーショラワインを一般に向けて販売している生産者は多くないなか、カルディナーレ家は1800年代の古いレシピを忠実に守るヴィーショラワイン醸造家だ。
「もともと売るために造るのではなくて、どの家にもある家庭料理の延長みたいなものでした」とルーカさん。かつては各家庭にオリジナルのレシピがあり、自分たちが飲む分は自分たちで手造りするのが普通だった。
「父の造るヴィーショラワインは、地元でも評判でした。だから父は思い切って仕事をやめ、ワイン造りに専念したんです」
地元で愛されてきたカルディナーレ家のヴィーショラワイン。 この伝統を後世に残していこう!と本格的に生産し始めたのが、2005年。父亡き後は子どもたちが支え合って、家族の味を引き継いでいる。
ヴィーショラの果実は小粒で、そのまま食べるとかなり酸っぱい。
「母はヴィーショラ独特の酸っぱさが好きで、ひょいっと実を摘んで、よく食べていたものです」。そう言って、ルーカさんの妹のジゼッレ(55)さんは笑う。
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