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「魔女の血」の異名を持つイタリア発ワインの秘密 生産者が語る「ヴィーショラワイン」の味わい

東洋経済オンライン / 2024年2月18日 12時20分

50日ほどかけじっくり発酵

ワイン造りは、6月に真っ赤に熟した実を手作業で収穫するところから始まる。収穫した実と砂糖を広口の瓶に入れ、50日ほど太陽に当てながら発酵させる。

「私が子どもの頃は、どの家にもこの瓶詰めがあったんです。子どもたちは大人の目を盗んで、ヴィーショラの実を取り出して食べていました。砂糖漬けになったヴィーショラはとっても甘くて、あめ玉みたいなんですよ」(ジゼッレさん)

瓶をときどき揺すりながら、果肉から真っ赤なシロップが出てくるのを気長に待つ日々。カルディナーレ家にとってヴィーショラワインは、家族で過ごした幸せな記憶と、切っても切れない関係にあるようだ。

最初の発酵が終わると、ワインの素ともいえるモストというブドウ果汁を加え、6カ月間かけてワインへと変化させていく。仕上げに、途中の工程で取っておいたサクランボ果汁を加えて、樽の中で熟成させる。

ヴィーショラワインは、食後のデザートワインとしてふるまわれる。

甘みの中に、サクランボが持つ爽やかさが引き立つ。飲みやすさと華やかさに加え、ヴィーショラのしたたかさも感じさせる。ヴィーショラワインの甘みはのどの奥に残るくどさがない。筆者はあまり甘い飲み物が得意ではないが、舌の上で転がしてゆっくりと味わいたい気持ちになった。

「ヴィーショラはこの土地に住む人々にとって、とても身近な存在なんです。貴族や農民といった区別なく、すべての人々がこのワインを愛してきました」とジゼッレさん。

「薬効を期待して製造」の過去

ヴィーショラワインがいつ頃から造られていたのか正確な記録はないが、薬効を期待されていたという側面もありそうだ。1583年にイタリアの医師、ピサネッリが書いた食事療法の本の中で、ヴィーショラは「コレラの解熱、痰の粘性を下げ、食欲を増進させる」とある。

実際、ヴィーショラにはポリフェノールとアントシアニンが豊富で、抗酸化作用や抗炎症作用がある。鉄分やマグネシウム、カリウム、食物繊維も多く、美肌やアンチエイジング効果も期待できる。

農民の間では、強壮効果や媚薬効果を持つワインとして、「魔女の血」と呼ばれていた一方で、貴族や聖職者たちの間では、「天使のワイン」と呼ばれ、教会のミサ用に使われたこともあるという。

家族の絆を大切に、先祖代々受け継がれてきた味を守っているカルディナーレ家だが、この18年の間には、たくさんの苦労があった。その1つが、父の代から大切に育てていた300本もの木を、何者かに無断で伐採されてしまったという悲しい出来事だ。

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