ヒット薬が97%減、住友化学子会社が陥った窮地 後継薬の売れ行きも目算狂う、財務は急悪化
東洋経済オンライン / 2024年2月19日 7時30分
「本当に大丈夫ですか」「金融機関の態度は変わっていないのか」
【図表で見る】この1年でキャッシュは急減し、借金が一気に膨らんでいる
1月31日にオンラインで開かれた住友ファーマの決算説明会。アナリストからは、今後の資金繰りすら危ぶむような厳しい質問が相次いだ。
創業125年超の老舗製薬会社で、住友化学の主要子会社の1つである住友ファーマが、2期連続赤字というかつてない厳しい局面を迎えている。
同社は1月31日、2024年3月期第3四半期決算の発表と合わせて、通期業績予想の大幅な下方修正を行った。
売上高は3170億円(前期比42.9%減)、営業損益は1560億円の赤字(前期は769億円の赤字)、最終損益は1410億円の赤字(同745億円の赤字)となる見込みだ。会社側は期末までに減損損失を計上する可能性をほのめかしており、赤字は一段と膨らむ恐れがある。
抗精神病薬の売り上げの97%が吹っ飛ぶ
なぜここまで業績が悪化したのか。最大の理由は、大黒柱だった抗精神病薬「ラツーダ」が2023年2月、主戦場のアメリカで特許切れになったことにある。
ラツーダはアメリカだけで年間2000億円もの売り上げがあり、特許が切れるまでの数年間、住友ファーマの売上高の4割弱を稼ぎ出していた。
医薬品は特許が切れると、またたく間に安いジェネリック薬に侵食される。ラツーダは売り上げの大きな製品だったため、ジェネリック薬を発売するメーカーも多く、会社の想定以上のスピードで売り上げが落ち込んだ。
2023年4月~12月末のラツーダのアメリカでの売り上げは、わずか51億円(前年同期実績は1793億円)。特許切れから1年も経たずに、売り上げの97%が消えてしまったのだ。
住友ファーマの自社開発品であるラツーダは、利益貢献も大きかった。他社から導入した薬のようにライセンス料などを支払う必要がないうえ、製造コストの低い低分子薬だったからだ。粗利益率は9割に近い水準だったとみられる。
稼ぎ頭の特許切れを前に、住友ファーマも手をこまねいていたわけではない。
2012年にはがん領域への参入を目指し、アメリカのボストン・バイオメディカル社を買収した。この会社の開発品の中で、大型薬になると期待したのが、「ナパブカシン」という抗がん薬の候補だった。
ところが目算は大きく狂った。複数のがん種で順調に進んでいたナパブカシンの開発が、2021年までにすべて中止となる事態となった。胃がん、膵がん、結腸直腸がん向けでは、臨床試験(治験)の最終段階である第3相試験で結果がふるわなかった。開発中止に伴い、2021年3月期には269億円の減損損失を計上している。
3200億円投じて手にした基幹薬も不振
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