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ヒット薬が97%減、住友化学子会社が陥った窮地 後継薬の売れ行きも目算狂う、財務は急悪化

東洋経済オンライン / 2024年2月19日 7時30分

ナパブカシンの雲行きが怪しくなっていた2019年、住友ファーマはさらなる賭けに出た。同社史上最大の3200億円を投じ、スイスとイギリスに本社を置く創薬ベンチャー、ロイバント社の子会社であるマイオバント社などを買収。複数の開発品を一挙に取得したのだ。

住友ファーマの野村博社長は当時、取得した前立腺がん薬「オルゴビクス」と過活動膀胱薬の「ジェムテサ」について「(年間売上高が)1000億円に届くポテンシャルを持っている」と語っていた。同じ会社から獲得した子宮筋腫薬「マイフェンブリー」を合わせて「基幹3製品」と呼び、ラツーダの特許切れ後の主要な成長製品と位置づけた。

しかしこれらも、会社の見立てとは大きなズレが生じている。

オルゴビクスの2024年3月期の売り上げ計画は515億円だったが、第3四半期累計実績は309億円と、進捗率は6割どまりだ。ジェムテサは470億円の計画に対し5割、249億円を見込んでいたマイフェンブリーに至っては3割弱の進捗にとどまる。

こうした状況を踏まえ、住友ファーマは第3四半期決算時に3製品の通期売り上げ計画をすべて引き下げた。野村社長は決算会見で、「予想の中に(3製品の)ポテンシャルに対する期待度が過分に入っていた」と反省の弁を述べた。

当初想定したスピードでの成長が見込めなくなったこれら基幹薬などについて、住友ファーマは第4四半期に減損テストを実施する方針だ。具体的な規模には言及していないが、2023年3月末時点の同社の貸借対照表には、基幹3製品関連の無形資産が3030億円計上されている。

SMBC日興証券の橋本宗治シニアクレジットアナリストは「(基幹3製品で)減損が発生する蓋然性は高まっており、とくにマイフェンブリーは減損計上が不可避と考える」と分析。最大で700億~1000億円規模の減損を計上する可能性があるとみる。

とくにラツーダの特許切れ以降、住友ファーマの財務は悪化しており、2023年12月末時点の自己資本比率は32.4%と、50%以上あった2年前から大きく低下。自己資本自体、3435億円にまで減少している。

基幹薬の資産価値切り下げによってさらに財務が悪化すれば、金融機関との取引にも影響がでかねない。

短期借入金がこの1年で急増

この1年、売り上げが大幅に落ち込み、キャッシュの流出も続く中で、住友ファーマは借入金を急激に増やしてきた。

2022年12月末に2657億円あった現預金は、2023年12月末には364億円にまで減少。一方、有利子負債は同期間で2497億円から4118億円に急増した。中でも短期借入金は、56億円から2275億円にまで増加している。

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