名鉄三河線「海線」廃止区間、車社会でどう変貌? 代替バスの運転経路とは異なる人の流れも
東洋経済オンライン / 2024年2月22日 6時30分
ローカル鉄道の廃止反対理由として、「鉄道がなくなると町がさびれてしまう」としばしば述べられる。しかし現実には鉄道の乗客が高齢者と高校生だけとなり、利用客数が極端に減少してしまったからこそ廃止論議が起こる。消えた鉄道の沿線地域と、鉄道を代替した公共交通機関は今、どうなっているのか。今回は末端区間が廃止されてしまった名鉄三河線の海線の現在を見る。
名古屋鉄道三河線の前身、三河鉄道は、東海道本線刈谷駅と三河地方を南北に結ぶ鉄道として、1914年に刈谷新(現在の刈谷)―大浜港(現在の碧南)間がまず開業。その後も延伸を繰り返し、1920年に挙母(現在の豊田市)、1928年に西中金、1936年には蒲郡まで全通している。
【写真10枚をすべて見る】2004年に廃止された名古屋鉄道三河線の碧南―吉良吉田間。通称「海線」の公共交通機関はいま、どうなっている?
碧南―吉良吉田間が廃止される
1941年には名古屋鉄道に合併。三河線に改称した。1948年には吉良吉田―蒲郡間が蒲郡線として分離。西中金―知立―刈谷―吉良吉田間の路線となった。運転系統上は名古屋本線と接続する知立で分かれ、北側が「山線」、南側が「海線」と通称される。
その後も産業路線や通勤通学路線として活用されていた。だが、末端区間は利用客も少なく、電車運転を廃止してレールバス(小型軽量ディーゼルカー)に置き換えて経費節減が図られたものの、累積赤字は増大。ついに2004年4月1日に、西中金―猿投間8.6km、碧南―吉良吉田間16.4kmは廃止となり、バスで代替されている。
今回はまず、海線の廃止区間の沿線を見た。2011年に西尾市が一色町、吉良町、幡豆町と合併した結果、現在はすべて碧南市と西尾市の市域となっている。
碧南市は海上交通の要衝として江戸時代から栄え、現在は衣浦臨海工業地帯の中核として各種企業が立地する町だ。人口は約7万3000人。西尾市の中心部は古くからの城下町で、人口は約17万人を数える。いずれも2004年以降の住民の数は安定しており、極端な増減傾向は見られない。
産業都市の碧南市と西尾市
西尾市の場合、2022年度の統計によると、自動車社会の中京圏の例に漏れず、自家用車の保有率は1世帯当たり2.2台。市外への昼間の流出人口が通勤と通学を合わせて約3万1000人なのに対し流入人口も約2万6000人あり、昼夜人口の差が少ない産業都市としての傾向が見られる。
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