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18歳の光源氏が「10歳の少女」に心奪われた深い訳 大河でも話題「源氏物語」の世界を読み解く

東洋経済オンライン / 2024年2月22日 14時0分

「なぜ、この女の子に魅かれたんだろう?そうか、この子は、藤壺と似ているのか」と気づくのが、このシーンなのです。ここではじめて、結ばれるはずのない藤壺への思いがどこまでも深いことに気づき、驚きとともに、涙が自然と流れるわけですね。

さて、その後、この少女についての詳しい事情が明らかになります。この時10歳の少女であった若紫は、祖母と一緒に暮らしていました。その理由は、お母さんが早くに亡くなってしまっていたからです。

この当時はよくある話ですが、若紫のお母さんは、「正妻」ではありませんでした。この時代、男性は多くの妻を持つのが当たり前の、一夫多妻制の時代でした。そして、その中でもいちばん、位の高い妻が、「正妻」となります。

若紫のお母さんは正妻ではないために、正妻の家から多くの嫌がらせを受けてしまい、若紫が幼いころに心労を募らせて亡くなってしまった過去を持っています。

そんな経緯があったため、光源氏と出会ったときの若紫は、お父さんとも離れて、母方の祖母と一緒に暮らしていました。そこに、光源氏は足しげく通うようになります。

しかし、半年が経ったある日、その祖母が亡くなってしまったのです。そうなると、父に引き取られることになります。今まであまり会ったことのないであろう、自分を愛しているかもわからない父親に引き取られるのは、とても悲しい出来事ですよね。そしてそんな若紫のことを案じ、「父親に引き取られる前に、自分の元に置いておきたい」と考えた光源氏によって、若紫は略取されることになります。

「主人公がなんでそんなことを!?」とツッコミを入れたくなるシーンではあるのですが、実はこれにもいろんな考察ができます。

光源氏も小さいときに、若紫と同じ境遇にいました。正妻ではないお母さんが、正妻の家からの嫌がらせによって、亡くなってしまった経験をしていたわけです。自分に重ねるからこそ、祖母を亡くした若紫のことを案じていたのです。

「自分のもとで、幸せに暮らさせてあげたい」と考えて、光源氏が引き取り、その苦境から救い出す……という展開に話が進むことになったわけです。

紫式部も母親を早くに亡くす

ちなみに、作者である紫式部も、早くに母親を亡くしています。ドラマ「光る君へ」では、1話で悲劇的な死を迎えましたね。ドラマの展開は創作を含んでいるので、実際に紫式部の母親がどのように亡くなったかはわかりませんが、光源氏と若紫・そして紫式部の3人は、「母がいない孤独感を味わったことがある」という共通点があり、だからこそ、「苦境から助け出して(助け出させて)あげたい」という想いが重なったのではないでしょうか。

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