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重度障害者を支える元パナ技術者開発のスイッチ 「アメリカ製品の廃番」の危機を受けて製品化

東洋経済オンライン / 2024年2月25日 8時0分

意思伝達装置を通して会話する太田メリサさん。スムーズなやりとりができる(記者撮影)

いつしか社会にとって、不可欠な存在となったスマートフォンやパソコン。事故や病気で重い障害を負い、寝たきりとなった人にとって、こうした機器の直接的な操作は難しい。そこで代替の手段としてよく用いられるのが、押しボタン式の入力スイッチだ。

【写真】入力スイッチで苦労する患者は大勢いる。メリサさんもこれまでに数々の入力スイッチを試した

兵庫県明石市に住む小学1年生の太田メリサさん(7歳)。生後6カ月ごろの時、脊髄性筋萎縮症(SMA)を発症した。10万人に1~2人の有病率とされ、全身の運動能力が徐々に低下していく難病だ。

メリサさんは支え無しで座ることができない。さらに人工呼吸器を補助的に装着しており、声も出しにくい。

スイッチの操作でYouTubeやLINEも

「お名前は?」「めりさです」「好きな色は?」「ぴんく」――。自宅を訪問した記者の問いかけに、ベッドに寝たままのメリサさんが、意思伝達装置を通してよどみなく返事していく。

取材中に「といれ」と装置で記し、家族を呼ぶ場面も。さらにiPadでYouTubeを開き、お気に入りだという料理の動画も教えてくれた。学習支援のアプリでひらがなの勉強をしたり、LINEで友人にメッセージを送ったりするところも見せてくれた。

これらすべてを、メリサさんは右手親指の下に固定した「ハーフスイッチ」1つで操作している。このスイッチを造ったのが、福祉機器を手がける大阪府茨木市のベンチャー企業「アクセスエール」だ。

上肢の不自由な人が電子機器を使用するためには、その人の症状に合わせた入力スイッチが欠かせない。

あまり知られていないが、iPhoneやiPadにもスイッチコントロール機能は搭載されている。カーソルが画面上を動き、外付けのスイッチをタイミング良く押すことで、各種アプリを操作できるのだ。

一方、これらの適合には①動く体の部位の特定、②そこで押せる固さや形状のスイッチを選んで装着――というプロセスが必要。専門的な知識が求められる。

患者を訪問支援して磨いた技術

2023年12月17日配信『元パナ技術者「重度障害者に言葉を取り戻す」挑戦』で詳述したように、アクセスエールの松尾光晴社長は、パナソニックの元技術者だ。

会社員時代から今日までの20年以上にわたり、計1000人以上の患者を訪問支援し、適合技術を磨いてきた。障害者向けスイッチの第一人者とも言える存在だ。蓄積した見識を自身のホームページ「マイスイッチ」で無料公開している。

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