入れ墨の「彫り師」と結婚した39歳彼女の"幸福感" 「見えない階層」を超えた2人のリアルな生活
東洋経済オンライン / 2024年2月25日 13時30分
都会には「見えない階層」のようなものがあると思う。家庭環境や学校、職業などによって最初からもしくは徐々に分かれてゆき、大人になって家庭を築く頃には異なる階層の人とはあまり交わらなくなる。街中でたまたま近くにいることはあっても親しくはならない。生活習慣や言葉遣いが異なるので、同じ日本語を使っていても話がかみ合いにくいのだ。
地方とは違って都会には人がたくさんいるので、同じ階層内の人付き合いで生活も仕事も完結できてしまう。そして、年齢差などよりもはるかに高い壁が形成される。
結婚相手は「彫師」
こうした階層を越えるかけ橋があるとしたら趣味かもしれない。バンドのファン仲間などで結ばれた意外な組み合わせをときどき見かけたりする。今回紹介するのは、彫師(入れ墨師)と半官半民の堅い組織で働く正社員という結婚事例だ。2人に共通するのは広義のアート好きという点しかない。
筆者はライター業のかたわら、男女を引き合わせて結婚までをお手伝いする「お見合いおじさん」をしていて、彼らは10組目の成婚カップルとなる。お見合い用に、彫師である清水一馬さん(仮名、46歳)の紹介記事を筆者が書いてネットで公開したのが2022年7月。後の妻となる朋美さん(仮名、39歳)からすぐにお見合いの申し込みがあり、オンラインで対面。昨年の12月に結婚した。
池袋駅から急行列車で30分ほどのところにある繁華街に彼らの新居がある。アニメ好きだという朋美さんがインタビュー場所に選んでくれた居酒屋は某人気アニメ映画に出てくるメニューを再現しているらしい。
Vネックのニット姿で髪も艶やかな朋美さんは快活に挨拶をしてくれて、こちらに気遣いをしながらもどんどん話し始める。仕事ができる美人OLという第一印象だが、緊張するとしゃべりまくってしまう傾向があるらしい。
「一馬さんと初めてリアルで会ったときもそうでした。普段は人に話さないアニメの話もしてしまって……。でも、一馬さんはバカにせずに『どのアニメがおすすめ?』と聞いてくれて、実際に観てくれたんです。そのタイトルですか? 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』と『ドロヘドロ』です」
朋美さんは恥ずかしそうにしている。アニメファンであることで嫌な思いをした経験があるのかもしれない。一馬さんがすかさず話に入ってきた。
「どんな分野でも人気作には必ずカッコ良かったりキレイだったりする表現があります。どちらのアニメも面白かったです。仕事の参考にもなりました」
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